現実味を帯びるイギリス「EU離脱」という悪夢のシナリオ

パナマ文書で風向き激変!
笠原 敏彦 プロフィール

厳しくなる庶民の目

2008年のリーマンショック後、各国はタックスヘイブンを通した課税逃れ対策に本腰を入れ始めた。理由は二つある。一つは、各国とも財政難に見舞われたことだ。二つ目は、国民の目が厳しくなったことである。

リーマンショック前は、庶民にとってタックスヘイブンは耳にはしても、別世界のことだったはずだ。しかし、欧米を中心に、ギャンブルのような金融取引で破綻した銀行は税金で救済され、そのツケは、増税と社会福祉削減などで庶民に回わされた。イギリスでは、キャメロン政権が2011年に日本の消費税に当たるVAT(付加価値税)を17・5%から20%に増税していたという経緯もある。

国民の課税逃れへの目が厳しくなり、富裕な政治家、エリート層、大企業にとっては都合の良い面もあったタックスヘイブンを放置できなくなったのである。

キャメロン首相は、先進国において対策強化の旗振り役とも言える存在だった。課税逃れは「道徳的に誤りだ」と明言し、自らが議長を務めた2013年のG8(主要8ヵ国)首脳会議では、ペーパーカンパニーを使った課税逃れを防止するため、企業の実質所有者の登録・公開を国際的に義務づける制度の導入を訴えていたのだ。

しかし、ここでも、キャメロン氏の政治家としての信頼性に疑問を投げ掛ける事実が報道で明るみに出る。

G8の流れを受け、EUはこの登録・公開制度に企業だけでなく、投資信託も含めることを検討した。この動きを水面下で潰したのがキャメロン首相で、2013年11月にEUの関係機関に書簡を送り、「企業と信託の違いを認識することは重要だ。登録制度は全てに適切というわけではない」と反対していたというのである。

父親の信託に投資した自らの記録が表沙汰になるのを防ぐために計画を潰した、と勘ぐられても仕方ない行動だった。

イギリスが抱える「後ろめたさ」

国民投票とはあまり関係ないが、パナマ文書で露わになったイギリスの「後ろめたさ」についても触れておきたい。

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が設立に関わったペーパーカンパニーなどの会社は21万社に上るが、その半数を越える11万社が登録していたのはカリブ海の英海外領土バージン諸島だ。タックスヘイブンとして有名なケイマン諸島やバミューダ島などもイギリスの海外領土である。

海外領土というのは、旧植民地の中で独立を望まず、今もイギリス国王の代理人である「総督」が国家元首を務める地域である。とは言っても、総督の役割は儀礼的なものであり、海外領土は自治を行っている。イギリスは「管理」するという立場だ。

イギリスはまた、マン島やジャージー島などの王族領を持つ。王族領も自治は行うが、外交・防衛はイギリスに依存している。

これら海外領土や王族領の多くがタックスヘイブンなのである。