現実味を帯びるイギリス「EU離脱」という悪夢のシナリオ

パナマ文書で風向き激変!
笠原 敏彦 プロフィール

しかし、国民感情は全く別の話だ。イギリスでは近年、カネにまつわる醜聞で政治家への信頼が地に落ちている。

イラク戦争でイギリスを泥沼に引きずり込んだブレア元首相は辞任後わずか数年で、コンサルタント業や講演料で1500万ポンド(約24億年)も私腹を肥やしたとされる。“セレブ首相”として国民の高い人気を博したこともあるブレア氏だが、彼は今や大の嫌われ者だ。

そして、国民を唖然とさせたのが、2009年に発覚した国会議員ほぼ総ぐるみの「経費流用スキャンダル」である。

このスキャンダルは、地方選出議員のロンドンでの住宅費補助制度を乱用し、1ポンドの冷凍ピザ代からタンポン代、アダルト映画視聴料、高級家具代までさまざまな用途外の目的に経費を使っていたというものだ。議員3人が逮捕され、閣僚3人が辞任、約400人の元・現職議員が経費返還を余儀なくされるという前代未聞の出来事だった。

イギリスでは元来、国会議員は富裕層が奉仕的に行ってきたという経緯があり、政治家の不正や汚職は少なかった。上院議員には現在も報酬はなく、必要経費が支払われるだけである。それだけに、このスキャンダルがイギリス国民に与えた衝撃は大きかった。その嘆きを端的に示したのは、エコノミスト誌の次の表現だろう。

「過去1世紀、イギリスは多くのものを失った。帝国、軍事力、経済的なリーダーシップ。それでも、我々は世界で最善の議会を持っていると考えていた。だから、スキャンダルは大きなショックだった」

そして当時、国民の怒りを説明するために使われたのが「キットカット効果」という言葉である。庶民は数千万円、数億円という巨額の不正となると別世界のこととして怒りも半ば止まりだが、自分たちが普段買っているささやかなお菓子代まで経費で誤魔化していたと知ると、身近に感じる分だけ許せなくなる、というセオリーである。

キャメロン氏の課税逃れ疑惑は、その金額の多寡とは関係なく、国民の政治家不信に追い打ちをかけるものであり、国民はあきれかえっているのである。

キャメロン氏のタックスヘイブン絡みの金融取引は、違法性はないのだろう。しかし、問題の焦点はもはやそこにはない。キャメロン氏が窮地に陥っているのは、自らの言動のダブルスタンダードによるものだからである。