# 貧困・格差

「ゆとり世代」学力低下はウソだった~大人たちの根拠なき差別に「ノー」を!

「ゆとりって言うな!」
後藤 和智 プロフィール

世界レベルで遜色ない若者の学力

実際のところ、いまの若者の学力はどうなのでしょうか。これを考えるために、2つの最新の国際的な学力調査を見てみることにしましょう。

まずは、2012年に行われたOECDのPISA(OECD生徒の学習到達度調査)です。順位が低下した2003年、2006年のPISAは、若者の「学力低下」の証拠として大々的に報じられましたが、2009年、2012年のPISAはそれほど大きな話題になっていないように思えます。

国立教育政策研究所の資料(http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/、『生きるための知識と技能5――OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2012年調査国際結果報告書』(明石書店、2013年)など)によると、その結果は、「読解力」が538点で4位。「数学的リテラシー」が536点で7位。「科学的リテラシー」が547点で4位です。

ちなみに、OECD平均は、数学的リテラシーが494点、読解力が496点、科学的リテラシーが501点ですから、相当に高い水準と言えます。そして、日本を上回るのは、上海、香港、シンガポールといった小規模な地域や国家であり、先進国という視点で見たら、数学的リテラシーで韓国が日本より上位になっている以外は、先進国ではトップなのです。

2012年調査で順位が上がったというと、「脱ゆとり教育」の成果だと考える人がいるかもしれません(例えば、PISA2012年調査の報道に際しては、読売新聞、朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞がこのような視点で報じた。佐藤博志、岡本智周『「ゆとり」批判はどうつくられたのか』太郎次郎社エディタス、2014年、pp.14-15)。

しかしそのような見方には疑問が挟まれるべきでしょう。そもそもいまの「脱ゆとり教育」が始まったのは2011年、新しい学習指導要領が実施されたときです。

PISA2012年調査を受験した若者は、2012年時点で高校1年生で、1996年生まれ。一方、いま「ゆとり世代」批判で取り沙汰される「ゆとり教育」が始まったのは2002年ですから、彼らが小学校に入ったときということになります。

つまり彼らは、小学校と中学校の期間を、完全に「ゆとり教育」にどっぷり浸かってきたことになるのです(佐藤、岡本前掲)。「それなのに」、少なくともOECDが規定するところの学力は向上しているのです。

もう一つは、PISAと同じく、OECDが行っている、こちらは成人(16~65歳)を対象に行われたPIAAC(OECD国際成人力調査)です。

PIAACの調査の詳細については割愛しますが(調査は2011~2012年にかけて行われた。詳しくは、http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html、または、国立教育政策研究所『成人スキルの国際比較――OECD国際成人力調査(PIAAC)報告書』(明石書店、2013年)を参照されたい)、この調査にはOECD加盟国を含めて全24の国・地域が参加しています。

こちらの調査では、「読解力」が296点で1位、「数的思考力」が288点で1位でした。16~24歳に限って言うと、「読解力」は299点で1位、「数的思考力」は283点で3位でした。

特に読解力に関しては、2003年と2006年の調査で、OECD平均とほぼ同水準であり、学力が低下したという「証拠」として出されますが(ちなみに2003年調査を受験した世代はPIAACでは23~25歳、2006年調査はPIAACでは20~22歳です)、過去のPISAを受験した世代が大人になったら、世界トップクラスの読解力を身に付けてしまっていたのです。