68人に1人が「自閉症」だと、ご存知ですか?

蔓延する間違った「思い込み」
大隅 典子 プロフィール

その成果もふまえていま、確実にわかっていることを先にいえば、自閉症とは、脳のはたらきに少しだけ変調のある状態です。その原因は、脳の発生発達のプロセスに求められます。

つまり、脳の発生発達を知ることこそが、自閉症を理解するための鍵となるのです。

brainPhoto by H. B. / Pixabay

にもかかわらず、自閉症には20世紀半ばから、母親の愛情の欠如が原因であるとする考え方がつきまとい、現在も根強く残っていて、自閉症児をもつ母親たちを苦しめています。

2016年になって、子宮頚がんワクチンには副作用があるのではないかということが専門家の間でも議論となっていますが、自閉症についても、三種混合ワクチンの接種によって引き起こされるという「ワクチン説」が出回ったことがありました。これは英国の捏造論文に端を発する間違った思い込みなのですが、いまだに信じている方は多いようです。

拙著『脳からみた自閉症』は、ともすると誤解されがちな、そのためにご家族や保護者の方々も無用の苦痛を背負ってしまいがちな自閉症について、筆者の専門である脳科学の立場からとらえたものです。自閉症とは何か、どのような原因で生じるのか、いまどのような研究が進んでいるのかについて、一般市民の方々にわかりやすく伝われば幸いです。

また、これから発達障害や自閉症について研究したいと考えている若い研究者や、その卵のみなさんにも読んでもらえたらと願っています。さらには自閉症患者団体の方々、児童福祉関係、医療行政関係、医学系の研究政策関係の方々にも手にとっていただければありがたく思います。

著者 大隅典子(おおすみ・のりこ) 
1985年、東京医科歯科大学歯学部卒業、1989年、同大学大学院博士課程を修了し(歯学博士)、同大学歯学部助手。1996年より国立精神・神経センター(当時)神経研究所室長を経て、1998年11月より東北大学大学院医学系研究科教授(現職)。2006年より東北大学総長特別補佐(男女共同参画担当)、2010年より大学院医学系研究科附属創生応用医学研究センター、脳神経科学コアセンター長、2015年より創生センター長。第20~22期日本学術会議会員。著書に『脳の発生発達―神経発生学入門』(朝倉書店)、訳書に『心を生み出す遺伝子』(ゲアリー・マーカス著、岩波現代文庫)などがある。
『脳からみた自閉症』
「障害」と「個性」のあいだ

大隅典子=著

発行年月日: 2016/04/20
ページ数: 256
シリーズ通巻番号: B1964

定価:本体  900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

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