68人に1人が「自閉症」だと、ご存知ですか?

蔓延する間違った「思い込み」
大隅 典子 プロフィール

にもかかわらず、自閉症の子どもの「ちょっと違った性質」が理解されないために、いじめにあってしまうことなどもあります。これは見過ごせない問題です。

日本でも、就学前や学童期に自閉症と診断される子どもが増えています。この20年間で、特別支援教育を受ける児童・生徒は倍増し、各地で支援学校が新しくつくられています。

自閉症は大きくいえば「発達障害」と呼ばれるカテゴリーに含まれる疾患なのですが、最近では「大人の発達障害」にも世間の注目が集まってきています。

自閉症は「子どもの心の病気」と考えられていますので、子どもの頃にそういう診断を受ける機会がないと、大人になってからも自分が自閉症であることを知らないままの人も多くいるのです。

社会人となって、仕事のうえで他人との密なコミュニケーションが必要になって初めて、それがうまくできないことに気づくというケースが増えてきています。

筆者の勤務する大学でも、発達障害の学生に配慮すべきことについて書かれたガイドブックが数年前から教員に配布されるようになりました。

大学入試を突破する学力はあっても、大教室で講義を受けることや、ゼミや研究室などで家族以外の人たちと長時間、密接に過ごすことが困難な学生が多くなってきたからです。

いま、自閉症の人が増えてきているのだとしたら、その原因は何なのでしょうか?

自閉症の原因とは

筆者はもともと、脳の発生発達のメカニズムを研究する基礎研究者です。脳ができあがるまでのしくみは実に複雑精緻で、そのプログラムは見事としか言いようがありません。裏を返せば、そのようなプログラムであるだけに、ほんのちょっとのバグが入るだけでも、脳のはたらき方は変わってしまうのです。

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このことに気づいてから筆者は、自閉症などの発達障害がどのようにして生じるのか、なぜ世界中で増えているのかについて、生物学的な観点から興味をもち、研究するようになりました。