鴻海を敵視するのは大きな間違い!~台湾歴30年の国際ビジネスコンサルタントが買収の効果を分析

藤 重太

郭台銘が欲しているもの

ところで、台湾でもシャープの鴻海への対応をいろいろと分析している。台湾の《商業周刊1477号》によれば、シャープの変節ぶりは、「シャープ第四代町田社長と第五代片山社長の内部抗争が大きな原因だ」とバッサリ斬り落としている。

第四代町田社長から第七代高橋社長までの間に、シャープ社内でどんな事が起こったか、細かく分析されていて面白い。また、日本経済に詳しい台湾の友人は、「日本のマスコミや日本産業革新機構がいくら騒いでいたって、みずほ銀行もUFJ銀行も鴻海を支持しているのは、見え見えだよ」と鋭い見方を示していた。

今回の鴻海のシャープ買収劇、台湾経済にとって大きな節目となる出来事を、多くの台湾人は期待しつつも、冷静に観察していたようだ。

日本で起こっている鴻海への懸念のなかでもっとも先鋭的なものが、「シャープの技術が中国に流出する」というものだ。だが、これは間違った懸念である。残念ながら、シャープの技術トレンドは近年の財務危機で研究開発が進まず、完全に遅れている。シャープの誇る有機ED技術(OLED)を使った中小型液晶パネル技術も、郭台銘は「OLEDを開発していたら、ALL Late(手遅れ)だ」と一笑している(4月2日の台湾報道陣向け会見での一言)。

では郭台銘が欲しかったのは何なのだろうか。シャープへの大胆な投資に踏み切った要因のひとつは、間違いなく液晶パネル事業のためだ。アップルの最大のサプライヤーである鴻海は、液晶パネル事業でも今後更に大きくアップルの受注を伸ばすといわれている。

今回の買収によってアップルを含め「日台米連合」が完成する。これによって、韓国勢を打ち破るという狙いと自信があるのだろう。

そして、郭台銘がなによりも欲しがっていたのは、「シャープ」というブランドだ。鴻海は「FOXCONN」という英語名の他に「富士康」という中国語の会社名も持っている。「鴻海」も含めてこれらはブランドではない。いわゆる受託生産(EMS)企業は、自社ブランドを持つことは暗黙のルールでできないのだ。しかし、今回の投資で、白物家電を中心とする世界的なブランド「シャープ」を手にすることができた。