鴻海を敵視するのは大きな間違い!~台湾歴30年の国際ビジネスコンサルタントが買収の効果を分析

藤 重太

あの郭台銘がよく耐えたものだ

台湾(鴻海)を理解していない報道が日本では目立つなか、台湾の新聞、雑誌では「狐と狸の戦争」「郭台銘の夏恋は前途多難」(「夏」とは中国語でシャープの意)など、冷静に分析する内容が目立っていた。ある台湾の友人が一言。

「最近の日本は、おかしい。東芝の粉飾決済やシャープの偶発債務隠しなど、昔ではありえないことが起こっている」

この言葉には私は切り返す言葉がなかった。しかも、台湾人には数年前に日本にダマされた過去がある。エルピーダ台湾上場・即破綻事件だ。

エルピーダメモリは、1999年に日立とNECの半導体部門が合同で設立し、株主には日本政策銀行(300億円)も加わる「日の丸優良企業」のはずだった。その企業が、2011年2月25日に台湾で預託証券(TDR)という方式で上場を果たし、当初台湾の市場から約120億円を調達する。しかし、ほぼ1年後の12年2月27日に日本で会社更生法を申請し、翌28日には台湾でも上場が即廃止される事態となった。

当時の台湾の証券関係者は、「日本の政策投資銀行が株主で、経産相の産業活力再生法の適用もあったので、エルピーダは日本が支えていくものと信じていました。しかしその後台湾との提携も次々と破綻、最後には酷い結果になった」と振り返る。

郭台銘のシャープへのラブコールは、2012年3月から始まっている。当時鴻海はシャープに670億円の出資で、株式を9.9%所有する方向で話がまとまりかけていた。郭台銘は、「日台連合で打倒サムスン、日台共闘で韓国企業に打ち勝とう」と掲げていた。

しかし、翌月の決算で3760億円もの大赤字を計上し、株価は550円から160円の暴落。当然鴻海は値段交渉を要求するが、結局交渉は白紙になる。その時の出来事も、日本では「鴻海の我がまま」と酷評されたが、なぜ160円に下がった株価を550円で買わなければならないのか、そちらのほうがわからない。

しかもシャープは同年12年の年末に、事もあろうかそのサムスンに保有株を3%前後売却してしまう。手のひらを返して、敵と手を組んだのである。郭台銘にとってこの裏切り行為は、許せなかったに違いない。その後、口を閉ざしていた郭台銘だが、2014年の台湾の雑誌のインタビューで「シャープに騙された」と吐露している。

さらに、そのうえでシャープの「偶発債務」が発覚した。台湾人からすれば、「馬鹿にするのもいい加減にしろ」と言いたくなるだろう。シャープの数々の無礼に、気の短い郭台銘がよく耐えたものだと思ってしまう。