佐藤優直伝!「バカ扱い」されない教養力
〜ビジネスマンこそ「日本史」を学べ

この記述から明らかなように、明治維新は、太平天国の乱、第2次アヘン戦争、クリミア戦争、アメリカ南北戦争、普仏戦争の文脈でとらえなくてはならない。東アジア諸国の中で、日本だけが植民地化されず、帝国主義国として発展することができたのは歴史的な巡り合わせによるところが大きいからだ。

このように日本史は世界史と関連づけて総合的に見ることが重要なのである。

戦後70年談話をどう読むか

2015年8月14日の閣議で、戦後70年の安倍晋三首相談話が決定された。私は、この談話の全文を5回精読したが、安倍首相が何を言いたいのかがよくわからなかった。有識者グループからの提言、連立与党・公明党の要請、保守政治家としての安倍氏の想いが混在した、錯綜した内容になっているからである。

安倍首相は当初、戦後50年に際しての村山談話を克服する目的で談話を出すつもりだった。ここで障害になったのが公明党で、公明党は支持母体である創価学会の平和主義の影響を強く受け、安倍政権が歴史修正主義に舵を切ることを本気で止めようとした。

一時、閣議決定を経ない「総理の談話」という形で、安倍氏の思いの丈を述べた私的談話を発表するという動きもあったが、公明党が閣議決定を強く求めたため立ち消えになった。

結局、<我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。(中略)こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。>と、明示的に確認することを安倍首相は余儀なくされた。公明党が安倍政権の歴史修正主義的傾向を抑えるうえで、かなりの影響力を持っていることが可視化されたのである。

第一次世界大戦後、当初は、国際連盟や不戦条約と歩調を合わせていた日本が、<満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。/そして七十年前。日本は、敗戦しました。>というのが、この談話における太平洋戦争に対する認識である。これは有識者グループの提言を踏襲した内容で、公明党の歴史認識とも合致する。

しかし私には、安倍氏が本心からこのような歴史認識に同意しているとは思えない。安倍氏が政治の師として尊敬しているのは、祖父の岸信介元首相だ。岸氏は、革新官僚として満州国の建設と運営に深く関与した。岸氏の業績を高く評価する安倍氏の政治信条と、満州事変以後の日本の歩みを過ちとする今回の談話の内容は齟齬を来している。

安倍氏が自らの想いを断ち切って戦後レジームの基本的歴史観を受け入れたということならば、それは立派な政治決断だが、この点について、談話のテキストだけで判断することはできない。今後の安倍政権の内政、外交を具体的に検討する中で、安倍氏の歴史認識を判断するほかない。