サッカー人生を左右する、代理人とのすれ違い

松原良香Vol.10
スポーツコミュニケーションズ, 田崎健太

しかし、正式契約がなかなかまとまらなかった。Mが他の仕事で忙しかったのか、ギュータースローに来なかったのだ。そんな2人の間の溝を感じとったのだろう。ドイツ人の代理人がこんなことを言い出した。

――Mとやっても駄目だ。俺を代理人にしないか? お前の要望は何だ? 奥さんを日本から呼びたい? 俺が全部手配してやる。

とはいえ、Mにも恩義がある。

移籍期間は各国リーグによって決められている。最後、駆け込みの契約を狙った選手たちが、次々とクラブの練習に参加していた。中に計算できる選手もいたのか、あるいは、クラブの経営の雲行きが怪しいためか、松原への条件提示額は次第に下がっていった。

「言われる金額が毎日落ちていくんです」

Mに早く来てくれと心の中で願うしかなかった。

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田崎健太(たざき・けんた)
 ノンフィクション作家。1968年3月13日、京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、 小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て 99年に退社。著書に『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)、『辺境遊記』(絵・下田昌克、英治出版)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『ザ・キングファーザー』(カンゼン)など。14年に上梓した『球童 伊良部秀輝伝』(講談社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。7月に新作『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)が発売。早稲田大学スポーツ産業研究所招聘研究員。