名古屋市議の報酬が1455万円に!?
怒りがわいてくる地方議員「ホントの給料」

佐々木 信夫

アメリカは10万都市で7~8名

地方議員の報酬が高い、数が多いという不満は全国に充満している。しかし、高いか安いか、多いか少ないかの議論の根拠がはっきりしない。

議員定数の根拠は明治半ばの県会,市会、町会、村会が発足した時のもの。当時、プロシア(ドイツ)の定数例を参考に決めており、戦後それを法律で追認してきた経緯しかない。これも現在、法定制が廃止されているので、もはや何も根拠はない。

そもそも「ウチの地域に何名の議員が必要か」を全く議論しないまま、あっという間に70年が過ぎたのが日本。10万都市で100名程度の議員を置くイギリスと7~8名程度でやっているアメリカとどちらが望ましいか。

これ自体、国情の違いから二者択一など意味がないかもしれないが、報酬問題と定数問題は連動している。イギリスの場合、議員数は多いが、議員報酬はなく、交通費等の実費弁償が一般的で土日夜間議会が多い。生活費は普通に会社などに勤めて得ている。

地方議員は非常勤特別職公務員という身分だ。議員の報酬は「給与」とは違う。一般職公務員のように、フルタイムで働き生活給の保障の色彩が強い「職員給与」と違い、その役務(サービス)の対価として支払われるもの。

その性格は身分報酬ではなく、労働報酬だ。本来、報酬は勤務日数に応じて支払われる「日当」の性格をもつ。

ただ、戦後報酬の支払い方について法規定がなかったこともあり、各自治体は条例で支給方法を決めた。月極めで支払い、そのうち、常勤の国会議員と同じようにボーナスまで出るようになったのは、前述の通り。

町村議で平均3.5ヵ月、政令市、県議で約5ヵ月の支給額。これによって、ますます生活給ではないこととの整合性がとれなくなっている。

もともと生活給の考え方を取っていないのに、報酬額は勤務日数と関わりなく、月額で支払われる。地方議員に期末手当(ボーナス)も出る。最近は国会の立法事務費に準じた政務活動費も出るようになった。

だが、待遇に対し多くの市民は納得していない。政治不信の根幹がここにあろう。加えて、号泣議員、セクハラ議員、暴力議員など地方議員の不祥事も目立つ。

『地方議員の逆襲』(現代新書)。地方議員、地方議会が変わることが「地方創生」に不可欠

地方政治に無関心、議員のなり手がないなど、日本の地方民主主義は深刻な危機に立つ。この解決の道を探らずして何が地方創生か。どうすれば再生できるか。

いずれ選挙に行く、投票所に行くことがまず先決。その気迫を有権者すべてが持つなら、報酬等に関する議員のワンマンショーも広く監視の目にさらされる。

高く払うならもっとよい働きぶりを! 数が多いなら思い切って議員数の大幅削減で質を上げよう。

住民は不満だけを言っていても何も変わらない。選ばれる政治リーダーのレベルは有権者のレベルで決まる、この法則を私達は忘れず、行動すべきである。

佐々木信夫(ささき のぶお)
中央大学教授、法学博士。大阪副首都推進本部特別顧問。1948年岩手県出身。早稲田大学卒業、早稲田大学大学院政治学研究科修了、慶應義塾大学法学博士取得。東京都庁勤務を経て、94年から中央大学教授、現在に至る。2000年~01年カリフォルニア大学(UCLA)客員研究員。慶應義塾大学、明治大学、日本大学各講師。現在、政府の地方制度調査会委員、日本学術会議会員、大阪府・市特別顧問など兼任。専門は、行政学、地方自治論。著書に『人口減少時代の地方創生論』(PHP)、『新たな日本のかたち』(角川ssc新書)、『東京都政』(岩波新書)、『日本行政学』『現代地方自治』(学陽書房)、『都知事―権力と都政』(中公新書)、『道州制』(ちくま新書)など多数。テレビ、新聞、雑誌などのコメント、地方各地での講演も多数。近著『地方議員の逆襲』(現代新書)では、地方創生のための地方議員、地方議会制度の大胆な改革案を提言して話題に。