読書って人生に重なりますね。今回の10冊も、私の人生の節目節目にそばにあって、勇気づけられたり、ときめいたりした本ばかりです。
1位の『優駿』は、学生時代の終わり、20歳前後に手に取った一冊です。競走馬を巡る物語ですが、最初は馬のことがよく分からなかったのでサラッと読んだだけでした。
その後、私はスポーツニッポン新聞社に入社して、馬の魅力に触れました。そうして、29歳になって、もう一度読み直した。すると、読みながら涙が出て止まらないのです。
なぜ29歳で感動したのかと言うと、馬についての知識がついていただけではなく、この頃、私は離婚をする直前で、人生の転機を迎えていたからなんです。
娘2人を抱えて、世間と対峙して生きていかなければならない状況の中、物語の内容にとても励まされました。
競走馬のサラブレッドは、身体能力に優れた馬を掛け合わせて作られてきた品種ですから、実は肉体の優劣はあまりない。じゃあ、なぜ強い馬と弱い馬がいるのかといえば、それは「精神の遺伝」があるからではないか、というようなこと書かれている。
これを読んで、私も激しい気性の両親から、強靭な精神を受け継いでいるのだろうから、もっと頑張れる、もっと進んでいける、と自分を鼓舞することができたんですね。
2位の『血脈』は、佐藤愛子先生がご自身の一族について描いた一冊ですが、まず佐藤家の血脈というのが並外れたもので面白いんですね。この一家に流れる“荒ぶる血”はものすごくて、創作ではなかなかこんな物語は書けない。ノンフィクションならではのすさまじさだなあ、と感じます。
愛子先生の父、作家の紅緑や異母兄である詩人のサトウハチロー、破滅的な生き方に走る子供たち……。家族の愛憎の念が渦巻く中、彼らは否が応でも血の繋がりの深さを再確認せざるを得ないんですね。強烈なインパクトがありました。
それでも書き手の父親や異母兄弟への目線がとても温かく、決して嫌な感じはしなかったんです。
私も、自分自身の家族の形が変容していく体験をしたんですが、この一家に比べれば私の苦しみなんて大したことないなとも思いました(笑)。とにかく、ここまで徹底的に自分の家族を客観視して書けるのはすごい。