震災特番「視聴率全滅」が意味するもの
~日本人は冷たいのか? それとも、見られない理由があるのか?

週刊現代 プロフィール

象徴的なのが、3月13日21時から放送されたNHKスペシャル「原発メルトダウン危機の88時間」だ。90分間にわたり、震災当時の福島第一原発の緊迫した状況を再現。当時フクイチの所長だった故・吉田昌郎氏を俳優の大杉漣が演じた。今年の震災特番の中でも規模の大きい番組の一つだ。

しかし、視聴率は7.6%と低迷。直前に放送された『真田丸』と、続く『ニュース・気象情報』の16%超から、一気に数字を落としている。大河ドラマを楽しんでいた人のおよそ半数がチャンネルを変えた、見るのを嫌がったのだ。

誰もが関心を持っていた、放射能の問題はどうだろう。「報ステ」の視聴率が低迷したことは先に触れた通りだ。原発事故についてはそもそも専門性が高い問題が多いうえに、放射能の人体への影響は、科学者の間でも議論が定まっていない。そんなわかりづらさが、事態を難しくしている。

『「フクシマ」論』などの著書がある社会学者の開沼博福島大学特任研究員が言う。

「『報ステ』の特集はセンセーショナルな作りでしたが、結局は、県民健康調査で報告される甲状腺がんと、福島第一原発事故由来の放射能との因果関係はわからない。

『報ステ』は昨年からこの問題を追っていますが、いつも結論が出ないまま番組が終わっています。敏感な視聴者は、放射能の問題が可視化されにくいことをもう知っているんです。『結局、答えは出ないんでしょう?』と、はじめから分かってしまう。

見ている側は、報道にカタルシスを求めています。答えが出ない問題に、疲労感や、もやもやした思いばかりが募る。そうなってしまうと、視聴者は離れていく」

専門家の間で議論が交わされても、一般の人々は簡単には理解できない。放射能の問題に不安を抱く人たちに、シンプルな答えを出してくれる人がいるわけではない。

忘れられないけど忘れたい

本誌は、震災特番の視聴率が低迷していることについてどう考えるのか、また、今後の放送について各局に問い合わせた。

各局、「総括はまだ」としながらも、NHKは「視聴率を想定していない」、フジ、TBS、日テレ、テレ朝の民放キー局からは「震災報道・番組についての視聴率は度外視」との答えが返ってきた。そして、どの局も震災報道の社会的な意義を強調し、「今後も継続していく」と回答する。

ある民放ディレクターは言う。

「『総括はまだ』と言いますが、そもそも総括などできないし、する必要もないと思います。私はもし社に『震災特番を作れ』と命じられたらいい番組を作ろうと考えますが、正直に言うと、自分から手を挙げようとは思いません。でもそのことで、自分を責めるのはやめようと思っています」