震災特番「視聴率全滅」が意味するもの
~日本人は冷たいのか? それとも、見られない理由があるのか?

週刊現代 プロフィール

今年も多くの震災特番が作られ、様々な番組内で特集が組まれた。NHKは、被災地の課題や原発事故をテーマにした「NHKスペシャル」を多数制作。

その視聴率は、3月5日放送分が6.0%、6日が7.5%、8日が4.4%、10日が5.5%と推移し、第5夜の11日に、前述した「津波」特番を放送した。

3月11日に放送されたテレ朝系の『報道ステーション』では、冒頭から45分以上にわたって、福島県の県民健康調査で甲状腺がんが多発している現状をレポート。かつて甲状腺検査の責任者だった鈴木眞一福島県立医科大学教授へのインタビューなど、各所への入念な取材がまとめられていた。

だが、その力の入れように反して、この日の「報ステ」の視聴率は9.8%。二桁が当然の人気報道番組が、前日、3月10日の視聴率13.3%から、じつに3.5%も数字を落とした。

5年後の3.11に、震災特番の視聴率が全滅した。この日のことは絶対に忘れない、自分の力の及ぶ限り、被災地に寄り添っていこう—誰もがそう思ったはずなのに、人々は震災特番から目を逸らした。

福島などの被災地と、他の地方との「視聴率格差」が日に日に大きくなっていると、NHK中堅ディレクターがいう。

「3年ほど前から、被災地とそれ以外の地域の差が顕著になってきました。原発事故による被曝について取り上げたある番組は、被災地では10%を超えたのに、関東では5%と、視聴率に倍の差が出てしまっていた。今では、差はもっと大きくなっているでしょう」

「無力感に襲われる」

なぜ人々は震災関連の番組から目を背けるのか。これは日本人の「冷たさ」の表れなのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏は、今の社会の停滞感が、震災特番を避ける気持ちに拍車をかけていると指摘する。

「テレビを見ている人も、震災復興が大切だと分かっています。でもたとえば、いま話題になっている保育園の待機児童の問題は、お母さんたちにとっては本当に切実です。

震災直後は、みんな被災地のために、と心を一つにしましたが、自分が現実に子育てや低賃金、介護の問題など目の前の問題に追い立てられてしまうと、そんな気持ちはなかなか持てません」

東京オリンピックや伊勢志摩サミットを進める国の政策に対し、「その予算を復興に回すべきだ」と憤った人は多くいた。しかし今は「介護士の待遇改善を」「奨学金制度の見直しを」と、より身近なテーマに引きつけて話すことが増えた。

だがもちろん、日本人は、あの大災害を忘れたわけではない。今年の3.11も、「被災地に向き合わなければ」と心のどこかで思っていたはずだ。でもそれができなかった。福島の地元テレビ局記者が、こんな経験を語る。