トランプよ、俺の歌を使うな! ニール・ヤングもR.E.M.も大激怒……お騒がせ男の「炎上選曲」が止まらない

アメリカ大統領選を10倍楽しむ
川崎 大助 プロフィール

「炎上商法」ならぬ「炎上選曲」?

さらに、すでに多く報道されているとおり、トランプのこんな「やらかし」は一度きりではない。その後幾度も幾度も、彼が「選曲」しては、無断使用された楽曲のアーティストが怒っては抗議する、というのが繰り返されていく――というわけで、ここでちょっと整理してみたい。

「トランプのお騒がせプレイリスト」こと、これまでに彼が「選挙活動に楽曲を無断使用」して、アーティスト側が抗議したことが報道された、主要なものは以下のとおり。

エアロスミスの「ドリーム・オン」、ローリング・ストーンズの「無情の世界(You Can't Always Get What You Want)」「悪魔を憐れむ歌(Sympathy for the Devil)」「ブラウン・シュガー」、エルトン・ジョンの「ロケット・マン」「タイニー・ダンサー」、アデルの「ローリング・イン・ザ・ディープ」「スカイフォール」……

どれも一般的に人気の高い、ポップ史に残る名曲ばかりだ。クラシック・ロックから、現代イギリスを代表するメガヒット・シンガー・ソングライターのアデルまで、会場を埋め尽くした大観衆みんなが声を上げて歌いたくなる――そんな「アンセム」調の大型のナンバーが意識的に選ばれていることがわかる。芸能活動も盛んだったトランプ、ああ見えて選曲の勘も悪くないのだ。

またこの選曲には、トランプの常日ごろの言動同様の特徴が見受けられる。とにもかくにも「わかりやすく」「情緒的に盛り上がれる」ことが最重視されているのだろう。だから観客は集会で「いっしょに歌うことができる」わけだ。そうした観点から見てみると、なかなかこれはよく出来たセレクションだと言える(が、すべて使えなくなってしまったのだが)。

ところで、今回のトランプのように「次から次へと」アーティストから楽曲の使用を断られる候補者なんて、ちょっと僕にはほかの例が思い浮かばない。初なのではないか? 一曲二曲ぐらいの使用停止なら、よくある話なのだが。

だから僕はこの一連の騒動こそが「トランプの本当の狙い」だったのでは、と見ている。「炎上商法」ならぬ「炎上選曲」だったのでは、と。わざと無断使用して、次から次へとアーティストに「嫌われて」みることで、より世間の耳目を集め、話題作りとなる――そんな目論見があって、こんな無茶苦茶をやったのではないか。

だって普通の「候補者」ならば、一度のクレームで十分だ。ついうっかりの「無断使用」だったなら、次からは気をつける「はずだ」。常識的な社会人ならば。しかし、だからこそトランプは「俺は常識を超えた男だ」とアピールしたかったのではないか? というのが僕の見立てだ。