田原総一朗が回顧する60年安保の真実「私は何も知らずに"岸はヤメロ!"と叫んでいた」

「戦後レジームの正体」第11回(後編)
田原 総一朗 プロフィール

岸の執行部は、当然予想される社会党の暴力的とも言える採決妨害に対抗して、単独強行採決に踏み切ることにした。

しかし、本会議強行採決案は自民党議員にさえ事前には知らされていなかった。総指揮者は川島正次郎幹事長であった。

そして5月19日を迎えた。

与野党の攻防を予測して院内の衛視を非常勤も動員して150人を250人に増員した。

自民党が右翼や暴力団などを集めているという情報を摑んだ社会党は、全国から1500人の行動隊を虎ノ門の共済会館に待機させた。

午後4時半、自民党は急遽、議院運営委員会を開いて会期延長を決定し、本会議を突破するために、自民党議員が多数で議長正面入り口を占拠した。議長を本会議場に送り込める態勢を固めたのだ。社会党の秘書団がこれに体当たりを繰り返したが、自民党議員団の態勢は崩れなかった。

国会周辺では、全学連のデモ隊が機動隊と衝突しながら渦巻きデモを繰り返していた。

午後10時半過ぎに、本会議開始のベルが鳴り、自民党議員だけが会場に入った。

社会党、民社党議員は審議拒否を決めて入場せず、社会党は秘書団と共に議長室入り口前で座り込み、議長が本会議場に入るのを阻止した。それに対して500人の警官隊がゴボウ抜きにかかり、議長が本会議場によろけながらたどり着いたのは11時50分であった。清瀬一郎議長はただちに、50日間の会期延長を議決した。そして、社会党議員たちにもみくちゃにされながら、安保改定関係法案について小沢佐重喜安保特別委員長の報告を聞くかたちで、一挙に可決した。

自民党の石橋湛山、河野一郎、松村謙三、三木武夫、宇都宮徳馬たち12人が欠席した。

翌朝の新聞各紙は、いずれも岸内閣の強行単独採決を厳しく批判し、朝日新聞は5月21日の社説で、「国民を裏切る」ものであり、自民党員は「岸総理に退陣を迫るべき」だと主張した。