玉木宏が語り尽くす『あさが来た』撮影秘話

いよいよ感動の最終回
週刊現代 プロフィール
玉木と波瑠の年齢は劇中と同じ11歳差

「正直に言うと、楽しいだけではありませんでした。長丁場の撮影ですから、季節や天候も変わっていく。夜中まで続く撮影はゴールが見えず、いったいどれだけ撮ればいいんだと途方に暮れることもありました。

『よう頑張りましたな』。クランクアップを迎え、まず波瑠さんに掛けた言葉です。彼女は面には出しませんでしたが、体調的にも精神的にも追い込まれ、苦しんでいるのを何度も見てきましたから……。僕が十分フォローできたかは分かりませんが、苦闘を知っている人間として自然と口に出てきました。

波瑠さんは泣いていて、それを見て僕ももらい泣きしてしまった。振り返って(脚本家の)大森(美香)さんを見ると、大森さんも泣いている。それを見て、またもらい泣きしてしまうという連鎖に(笑)。

今までいろいろな作品を演じさせてもらいましたが、涙が出るということは、数えるほどしかありません。それくらい役と向き合い、作品と向き合い、臨んできた11ヵ月だったんですね。

新次郎はチャーミング

放送が始まったばかりの頃、プロデューサーは『あさが来た』の見所はデコボコ夫婦の面白さなんだ、とおっしゃっていました。デコボコというのは記号で表すと凸凹で、向き合わせると一つの形になります。ですから、あさと新次郎は似たもの夫婦ではなく、足りないところを補って一つになれればいいと思っていました」

新次郎を演じるうえで、長丁場だからこそ、一貫性のある人物だと視聴者に思ってもらえるよう心を砕いた。

「朝ドラという環境は、これだけ長い間演じるわけですから、役の解釈は誰よりも演じる本人が一番徹底して行わなければいけません。周りはもしかしたら見落としているようなことでも、自分が役の人柄を感じて演じなければその役を成立させられない、ということがだんだんと分かってきました。

大森さんの書いた世界を崩すということではありません。台本の合間合間に、この一言があったほうがいいのかな、という感じでアドリブが出るんですね。ずっと役を繋いできたので、今までの流れからすると、こういうことを言ってもおかしくない、むしろこういう言葉のほうが合っているんじゃないかと肌で感じるようになるとでもいうか……。

たとえば加野屋の廊下で千代の恋する東柳啓介と初めて対峙した場面もそう。

『帝大生の東柳啓介です』と名乗られ、『わ、わてはおとうちゃんの白岡新次郎だす』と返すところは、そういう言い方に変えさせてもらったんです。相手にはちゃんと肩書があって、でも新次郎にはない(笑)。だから慌てて『おとうちゃん』と肩書を付けて、張り合おうとする感じ。

台本上は『はじめまして』くらいでしたが、もうちょっとチャーミングに見えたほうが良いんだろうな、と」