中島みゆき『時代』が今日も歌い継がれる理由
~縁の深い3人が、その答えを出した

瞬間のひらめきで曲をつくる

上柳 こんなこともありました。'10年にみゆきさんの東京国際フォーラムコンサートを観にいったときのことなんですが、僕の前に座っていたのが中年の男性だったんです。その人がコンサート中ずっとわさわさと動いていて、「なんだか落ち着かない人だな」と思っていました。ところがみゆきさんが『時代』を歌うと途端に曲に聴き入り、嗚咽を漏らし始めたんですよ。

田家 みゆきさんといえば、アーティストとしては静かな求道者のイメージがありますよね。けれども、ラジオではとてもハイテンションで話す。上柳さんは素顔の中島さんをよくご存知だと思いますが、どちらが本当の彼女の姿なのでしょう。

上柳 難しい質問です。多分どちらも本当のみゆきさんなんでしょうね。彼女にインタビューをしていると、最初ハイテンションでバーッとおしゃべりするんですが、音楽の話になった途端に、ふっとシリアスな、アーティストのみゆきさんになる。僕はその瞬間が好きなんです。「あ、いま音楽家のモードに入ったぞ」と。

どんなときでも本当に真剣に物事に取り組む人なんだと思います。ラジオの放送前も、いつも番組で取り上げるハガキを熟読されていました。そして番組が終わる深夜3時からすぐにスタッフとミーティング。私の番組が早朝の5時に終わっても、まだ会議をしていることもありました。

田家 さまざまな面があるのも、彼女の魅力なんですね。歌うときも、シャウトする彼女と、ささやく彼女、いろいろな顔を持っていますよね。

上柳 それについても、本人に聞いたことがあるんですよ。曲を作る段階でここはシャウトして、ここはささやくように歌って、とあらかじめ決めるんですかと聞いたら、みゆきさんは「そんなこと、曲を書いているときはまったく考えていないのよ」と言っていました。

曲ができて最初のリハーサルのときに、バンドのみんなで「せーの」でポンと歌いだしたときに、たまたま自分がシャウトで歌ったら、それ以降もその部分はシャウトにするとおっしゃっていました。

八神 その瞬間のひらめきで曲を作り上げていくんですね。

上柳 だからラジオ番組のあのテンションも、初めてラジオ局のマイクの前に座ったとき、追い詰められてポンと出たのがあのテンションだったと思うんです。それまでは、コンサート会場でお茶を出すアルバイトをしていて、ラジオから受ける印象とは真逆の、まったく目立たない女性だったそうですから。

田家 僕なんかも、中島みゆきというと、ジーパンに白シャツという地味なイメージが離れない。