世界のCEOが選んだ尊敬するリーダー第1位! チャーチルの不遇と成功

なぜロンドン市長が彼の伝記を?
小林 恭子 プロフィール
ボリスは国会議員としての顔ももつ。キャメロン首相とのツーショット〔PHOTO〕gettyimages

なぜ慕われるのか?

「ボリス」が次期首相候補者の一人と言われるのは、その国民へのアピールの強さゆえだ。彼がいれば、きっと選挙に勝つだろうという保守党側の狙いがある。

なぜ慕われるのだろう? ボリスの風貌を見てみよう。全体的にやや太めの体形で、特に美形でもないのだが、金髪のぼさぼさ頭とその下に輝く、いたずらっ子のような輝きを見せる青い目がある。

英国では口を開くとその人の社会的出自がすべて見えてしまうというが、ボリスはその経歴を反映して、名門大学で教育を受けた人が話すような、いわゆるエリート層の英語の発音で話す。

しかし、その話にはジョークや言葉遊びがいっぱいで、時にはフランス語、時にはラテン語が混じる一方で、その時々にトレンドになっている言葉が挟み込まれる。口を開ければ何かジョークが出てくるだろうという期待がいつもある。

そこで、「あいつはエリートだけど、面白いやつなんだ」「気取らないやつだな」というイメージが広がった。

このイメージ拡散に大きな役割を果たしたのがテレビ出演だった。BBCでニュースをネタにするクイズ番組「ハブ・アイ・ゴット・ニュース・フォー・ユー」という番組がある。ボリスはこれに頻繁に出演し、時には幅広い知識を披露し、時にはほかの出演者の笑いものにされたり、ジョークをジョークで切り返したりしたながら、国民的な人気者になった。「頭がいい」「面白い」という評判が付いた。

今でも「面白いだけの人物」「道化」という評価は根強いが、ボリスが政治的野心を内外に示したのが2008年のロンドン市長選。現職を破って当選し、2012年の選挙も再選した。下院議員としての経歴はあったものの、それほど目立つ仕事はしておらず、これが本当の実のある仕事となった。

ボリスの最大の願いは首相になること。大学時代には後輩だったキャメロンが2010年に43歳で首相になったことが、内心ではかなり響いているはずだ。

著作『チャーチル・ファクター』は、ボリスの首相を目指すという宣戦布告として受け止められた。つまり、ボリスは「自分はチャーチルだ」「チャーチルのように首相になりたい」と言いたいのである。

確かに、共通点は多い。ボリスは貴族の出身ではないにせよ、エリート層であることは間違いない。父が政治家であったことも同じだ。チャーチルの母は米国人でボリスは米国生まれ。米国とのつながりの深さでも似ている。

チャーチルが言葉遊びを楽しみ、茶目っ気があり、国民から好かれた点も似ている。従軍経験を新聞に寄稿したり、それを本にしたり、ジャーナリスト兼作家であったチャーチルだが、ボリスもジャーナリスト出身であり、小説を含む著作の数々を書いている。かつ下院議員でもある点も共通している。

チャーチルが保守党から自由党、そしてまた保守党に戻り、日和見主義者と見なされていたことや自己愛の強さ、ちょっと変わっていると思われていたことなども、ボリスに重なる部分がある。