ブッフォンと楢崎正剛、2人が大事にしている「基本」

二宮 寿朗

楢崎正剛が語る「基本の大切さ」

日本人GKで同じスタンスに立っているのが、昨シーズンにJ1初の600試合出場を達成した名古屋グランパスの守護神・楢崎正剛だろう。

昨秋にインタビューした際、彼はこう言っていた。

「正面でボールをしっかり取る、しっかりと足を運ぶ。そういった基本の大切さを僕はこれまでのキャリアのなかでずっと言われてきましたからね。蓄積されてきたものがあると感じているし、すべては基本だと思う」

奈良育英高ではシュートに対して横っ跳びでもしようものなら、監督からお叱りの声が飛んできた。卒業後、横浜フリューゲルスに入団し、2年目にGKコーチでチームに入ってきたブラジル人指導者マザロッピもまた基本の大切さを口酸っぱく言う人だったという。

このマザロッピコーチは現役時代にグレミオでリベルタドーレスを制し、ハンブルガーSVを破ってトヨタカップを制したというキャリアを持つ。「(出会いは)今思えば大きかった」と楢崎が語るほど、影響を受けた人物でもある。

「1年目(95年)のシーズン最後ぐらいにマザロッピが見学に来ていて、挨拶したんですけど、あまりに顔がいかつくてちょっとうろたえた記憶がありますよ。でも実際は印象と違った。ミスが起こったときに“自分もそういう経験がある。こうすべきだと思う”と、そのシチュエーションによって実体験で話をよくしてくれました。若いころって、何でもスッと入ってくるじゃないですか。専門的で、大舞台を経験したコーチにこのときに出会えたのは本当に良かったなと思います」

基本を大切にしながらプロ入りした彼が、尊敬できるコーチのもとでまた基本を磨いていく。

若手時代に基本を嫌というほど叩きこまれ、土台をしっかりつくったからこそ彼は20年以上にわたってコンスタントに出場し、40歳を目前に控えながら今なお日本のトップレベルでプレーを続けていることができているのかもしれない。

基本こそが、己の根幹。

たとえば自分でうまくいっていないと感じたとき、そこにスッと立ち戻ることもでき、シーズン通してムラの少ないパフォーマンスにつながっているのではないかと思えてしまう。これは楢崎、そしてブッフォンに共通していることだ。

2人は年齢も、リーグ戦出場数もほぼ同じ。95年にリーグデビューを果たしたという共通点もある。インタビューの最後にブッフォンの話を振ると、「僕とはまったくレベルが違いますから、比較しないでくださいよ」と彼は笑って受け流した。

小倉隆史新監督を迎えた名古屋で今季も変わらず、レギュラーを張り続けている。その安定感ぶりも変わらない。

海の向こうでのブッフォンの偉業は、「基本の人」に少しでも刺激を与えただろうか。Jリーグ(J1)の連続無失点記録は93年に清水エスパルスのシジマールが達成した「731分」だという。

GKはフィールドプレーヤーよりも選手寿命が長い。

ベテランだからといって、不可能ではない。そのことを何よりブッフォンが証明してくれている。