海外企業のほうが必死に学んでいる「トヨタ」の強さの秘密

日本人が知らない日本最大のグローバル企業
酒井 崇男 プロフィール

人が人を評価できる文化

Q:やはり難しいのは人が人を評価するということです。多くの企業はそのへんがうまくいかない。トヨタは社内文化として、「正しい評価」ができているということでしょうか?

酒井 もちろん、 トヨタであっても人間がやることですから、完璧にできているとは思いません。深刻な問題もいろいろあるようです。しかし、やはり豊田英二氏ら、いまのトヨタグループの基礎を作った人達が基本的な仕組み作りという意味で優れた仕事をしてきたということははっきり言えるのではないでしょうか。

本書の冒頭で出てくるように、現在トヨタ本社があるところは、もともとは狐や狸が住んでいて、治安もお世辞にも良いとはいえない地域でした。つまり何もないところから、いまのトヨタが出てきている。

結局、人間の知識とか知恵とか創造性を、皆が、実際に買う商品性をもった製品に結びつけることで成長してきたわけです。豊田英二氏同様、創業者に次いで2代目社長だった石田退三氏は「結局一番難しいのは人間」ということを言っています。

その、価値を生み出す人間のハタラキ、つまり「人間系」がトヨタを含めてどの会社でも一番難しいところだと言えます。最近はこうした問題を英語圏では、タレント性の管理、つまりタレント・マネジメントと言います。

工場のワーカーや、定型的な労働をするタイプの事務系のホワイトカラーのような人達の管理方法は最近では分かっているしだいたい確立されている。一方で、それ以外のタレント性、創造性、知的な創造性を求められる仕事の分野の話、つまりタレント・マネジメントがいまは人間の問題として難しいところです。ここをうまくやらないと、最近は会社そのものがあっという間になくなることすらあるわけです。

特にトップマネジメントの人間系で大きなところで間違いを犯すと、ソニーのように大きな打撃を受ける。前著『タレントの時代』で書いたように、「バカは連鎖する」から です。

ここで「バカ」とは、養老孟司氏の著書『バカの壁』で言う意味での「バカ」のことです。前著では、米国人の言い方では、「リーンとタレント」について体系化してあります。そちらも本書と合わせて参考にしていただきたい。

Q:いまから他の企業はトヨタに学んで会社を変えていくときに、すべきことはなんでしょうか?

酒井 日本は、製造業はとくに、TPSやQC(工場内での品質管理)はしっかりやってきた会社が多い。生産技術や生産管理もよく研究されてきて、国際的にみても比較的まだ高い水準にある。