共和党主流派「期待の星」ルビオはなぜ敗れたか

トランプ旋風の裏側で
渡辺 将人 プロフィール

ブッシュ家の逆鱗に触れたルビオ

そもそもルビオに勝ち目はあったのか。

日米外交筋の間では、ヒラリー以外ではルビオ人気が突出していた。上院外交委員会所属で政策を知っており、日本に対して深い理解があった。外務省も以前からルビオに注目し日本に招き、2014年の安倍総理への表敬訪問でも、東アジアの安全保障について日本の立場を支持する意向を表明している。

外交の安定的な継続性という点では、共和党側ではルビオというのが共通認識だった(ただ、それだけに過度な「親日」期待から、日本のプレスからの質問や、東アジアについての質問に答えてくれないと取材現場ではイメージ上のギャップが増幅されたようだが)。

しかし、これは外交フロント、特に日本目線からのルビオ像(期待)であって、アメリカの国内政治の文脈での政治家ルビオは、深刻な脆弱さを抱えていた。

第1に、フロリダ州地盤でありながら、知事だったジェブ・ブッシュの組織の支援が得られなかったことだ。

両者の関係は、元々は悪くなかった。1998年のルビオの初の公職選挙以来(ウエストマイアミ市)、ジェブは「保護者」として支援してきた。ルビオもフロリダ州議会議長としてジェブの政策を支え、両者の関係は「ウィン・ウィン」に見えた。

2016年大統領選にジェブが出るなら、弟子のルビオは「待つ」のが筋という暗黙の了解が支援者筋にはあった。しかし、ルビオには魔が差した。「ブッシュ王朝」の継続に思いのほか、共和党有権者が不満を抱えていて、兄のジョージ・W・ブッシュ前大統領の不人気も根強かったからだ。

なるほど筆者も2015年夏にジェブの支援者の内輪の会合で、元知事本人と面会したことがあるが、カウボーイのイメージの兄とは真逆で、神経質でいい意味で繊細な人物で、それだけに草の根の人気が今ひとつなのも頷けた。ルビオも同じように感じたかもしれない。「今出れば行けるかも」と。

しかし、これがブッシュ家の逆鱗に触れた。「弟子が師匠を追い落としたようなものだ」と関係者は言う。

ジェブの支援者との暗黙の約束を破って出馬しただけでなく、ジェブを上回る代議員を獲得。ジェブは自分が知事を務めた州まで生き残れず撤退し、政治人生の晩節を汚された。それもこれも可愛がっていた弟子の裏切りによるものだ。

フロリダ州共和党幹部は、ルビオがアイオワで3位になった直後、「ルビオでの一本化」について質問した私に、匿名条件にこう断言した。

「ブッシュ家はルビオの野郎を許さない」

「ルビオ大統領誕生だけは許せない」と、ジェブと2回のブッシュ政権に特に忠誠心の高い層は息巻いていた。ジェブが知事として張り巡らしたフロリダ全土の組織は、ルビオのために活発には動かず(動くなとまでは命じていないだろうが)、ジェブは最後まで公にルビオを支持しなかった。

「トランプ阻止」のためですら支持できない深いわだかまり。これがルビオのフロリダ敗北の1番の理由である。トランプの高笑いが聞こえる。