NBAに最も近いところにいる日本人、渡邊雄太が歴史を変える瞬間は来るか

スポーツコミュニケーションズ, 杉浦大介

僕の力ではNBAはほど遠い場所

――NITトーナメント1回戦までの過去4戦中3戦では2桁得点で、この4試合では平均15.5得点。短い期間とはいえ、ディヴィジョン1でこの数字は素晴らしい。シーズン終盤を良い感じで締め括れているね。

渡邊: レギュラーシーズン最終戦のデビッドソン大戦でキャリアハイの得点(22点)を挙げて、自信を取り戻すことができました。それ以降は伸び伸びプレーできるようになったんです。

今季はスリーポイントシュートが(高確率で)入ってなかったがために、打つ時も躊躇してしまっていた。それで打ってもまた外れてしまう、という悪循環になっていたんです。ただ、自信がついた今は目の前が開いたら打つ。良い精神状態でプレーできています。

今季中には日本代表の長谷川監督からアドバイスを受けるシーンも。アメリカでの経験を糧に、今後は代表での活躍も期待される

――ここに来て上り調子の姿を見ると、あと一歩でNCAAトーナメントに届かなかったのが余計に残念に感じる。選出は絶望的と見られていたから、出場チームが発表される13日のテレビ番組を同僚たちと見たりはしなかった?

渡邊: 僕はここ(アリーナのロッカールーム)で何人かと見ていました。ただ、希望はほとんどなかった状態だったんで……バージニア大がいきなりトーナメントの第1シードに選ばれた時、もしかしたらと思ったんですけどね。ただ、やはり願い叶わずでした。

――そう、直接対決で勝ったバージニアが第1シードだった。A10トーナメントで一時は16点差をつけながら、逆転されて敗れたセントジョセフ大が結局はその大会で優勝し、こちらもNCAAトーナメントに進出している。本当に惜しかったけど、今年のチームにわずかに足りなかったのは何だと思う?

渡邊: 今季はトーナメントに出ることを念頭に激しい練習を続けてきました。最後は本当に紙一重だったと思います。ただ、コーチに課題としてずっと指摘され続けてきたのはやはりディフェンスでした。このチームはオフェンスはどこからでも点が取れる。しかし、ディフェンスで崩れ始めた時に、オフェンスも機能しなくなって負けるパターンが多かった。ディフェンスをもう少し詰めることができていれば、結果は少し違ったかもしれないですね。もちろんそれは結果論だから、わからないですけれど。

――チームプレーだから数字がすべてではないとはいえ、1年を通じた個人成績は前年比でそれほど伸びていない。さっきも話が出た通り、今季途中にシュート不振に陥った時期もあった。自身のプレーをどう振り返る?

渡邊: 自分でももっとできると思っているので、正直、納得は全然できていないです。実際に過去4戦ではこれだけ活躍できる力を持っているのに、シーズンを通じて発揮できなかった。僕がもっとできていればとも思ってしまいます。長い時間を使ってもらった中で、そのプレータイムに見合った活躍はできていなかった。まだ(NITの)試合は残っているとはいえ、今日までの段階では悔しい想いの方が強いのは事実です。 

――そうは言っても、収穫も少なくなかったとは思う。特にディフェンス面では相手校のエース級とのマッチアップも任されるようになった。

渡邊: 今季は(4年生の)パトリシオ・ガリーノが相手エースのディフェンスにつくことが多いですけど、来季からは僕がその役になると思います。今季中もエース級にマッチアップさせてもらう時間もあって、良い経験ができました。あと、オフェンス面では課題にしていたドライブもいい感じで出ていたかなと。その2点に関しては、今シーズンの収穫だったと思います。

――ジョージ・ワシントン大からは今季限りで4人の最上級生が抜ける。来季という言葉が出てきたけど、3年生として挑む新シーズンは、チームの中心として引っ張っていきたい?

渡邊: 僕がそういう立場にならないといけないと思っています。4年生4人が抜けるのはチームとしては本当に痛い。ただ、1年生で良い選手が入ってくると聞いていますし、4年生が抜けたからといってそれを言い訳にはできません。来季も良いチームを作って、NCAAトーナメントを目指してやっていかなければいけない。1年生時から長いプレー時間をもらっている僕が中心になって、いろいろな面で活躍できたらなと思います。

2年連続で目標にわずかに届かず。来年は勝負の年だ

――大目標は今年と同様、NCAAトーナメント?

渡邊: はい、A10カンファレンスで優勝し、トーナメントに進むのが目標です。

――そのためには外国人選手とはいえ、3年生になればリーダーの一人にもならないといけない。

渡邊: リーダーシップについてはまだ足りない部分が多いと思います。言葉の問題もありますし。ただ、来年には、もうそうも言っていられない。発言すべき場所ではしっかり発言して、上級生として下級生をしっかり引っ張っていかなければいけません。自分が1年生として入った時に上級生にしてもらったように、下級生に接していけたらと思います。

――言葉のコミュニケーションはもう問題ない?

渡邊: そうですね。ほとんど大丈夫です。

――最後になるけど、渡邊選手は一般的に“NBAに最も近いところにいる日本人”と評されている。そして、A10トーナメントで対戦したセントジョセフ大のエース(デアンドレ・ベンブリー)などはNBAに進んでいくレベルの選手だと思う。そういった選手たちと実際にマッチアップもするようになって、NBAとの距離をどう感じている?

渡邊: 正直、現段階での僕の力ではNBAはほど遠い場所だなと思っています。ただ、セントジョセフ大のゲーム中にベンブリーとマッチアップしても、抑えられていた時間帯もありました。正直、まだ遠いですけど、一歩ずつ、一歩ずつ、近づいていっているんじゃないでしょうか。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。

※杉浦大介オフィシャルサイト>>スポーツ見聞録 in NY