私たちのDNAの大部分は、「ウイルス」で出来ていた!

最新研究が塗り替えた驚きの「生命」像
中屋敷 均 プロフィール

―中屋敷さんの最新作は「ウイルスは生きている」というタイトルですが、そんな生物ゲノム内で「生きている」ウイルスたちのことを書いたものですか?

中屋敷:そういったゲノムに潜り込んでいるウイルスの例はもちろんたくさん紹介していますが、「ウイルスは生きているのか?」という昔からある大命題にも向き合った本になっています。これは「生命とは何か?」という問題に直結するので、私なんぞが簡単に総括できる話ではないのですが、私が考えていることをお話したいとは思います。

まず、最初に指摘しておきたいのは、生命とは何なのか、ということを考える上で、人の常識というか、感覚みたいなものが非常に邪魔になっているということです。それを本書では「手足のイドラ(幻影)」と揶揄して呼んでいるのですが、どんなものでも手足をつけたら生きているように見える、みたいな話です。

手足のイドラ(幻影) 原図はProtein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb/101/motm.do?momID=1 32)より引用

―確かに生命と言えば、何か活動するものであったり、人間や動物に形が似ていれば、「生き物」という親近感は湧きますね。

中屋敷:ただ、生命の起源みたいなことを考えていくと、その昔は、手足はない訳ですよ。まぁ、当たり前ですが。酸素呼吸をするとか、体が温かいということだって、一部の生物の特徴に過ぎません。

現在、生命は化学進化によって生じたとされていますが、そうだとするなら、その昔は細胞構造も持たなかったでしょうし、その当時はエネルギー代謝も単に外部の環境を利用していただけのはずです。

生命の形というのは、地球の歴史と共に変化してきたし、今も変化しており、また未来にはもっと変わって行っている可能性があります。

だから、生命とは何か、を考える時に、現存の生物の姿、特に人間や教科書でよく紹介されているような代表的な生物の姿に囚われてしまっては、正確な判断ができないと思うのです。もちろん手足のあるなしは関係ない(笑)。

―では、生命にとって、何が大切な特徴なのですか?

中屋敷:これはむしろ前著『生命のからくり』で詳しく書いたことなのですが、私は「生命」というものを、一つのロジック、ある種の情報と言ってもよいかも知れませんが、それが継続的に発展・展開する現象と捉えています。

これはそれまでに存在する情報をきちんと蓄積する「情報の保存」と、そこに新しいものを加えたり、修正するような「情報の変革」、この二つのベクトルが相互に作用することで発展していく現象です。

その物質的な基盤となっているのが、現状ではDNAやRNAなどの核酸分子です。この物質的な基盤の上で、「情報の保存」と「情報の変革」が周期的に起きるサイクル、これはいわゆる「ダーウィン進化」ということになるのですが、これが繰り返されている。このことが生命の最も重要な特徴だと私は思っています。