私たちのDNAの大部分は、「ウイルス」で出来ていた!

最新研究が塗り替えた驚きの「生命」像
中屋敷 均 プロフィール

―感染したウイルスの遺伝子を用いて進化が起こっているというのは面白いですね。

中屋敷:1999年にエリック・レイモンドという人が、コンピューターソフトウェアの開発様式を表現するのに「伽藍とバザール」という言葉を提唱しました。

これは、伽藍、つまり整然と配置された寺院や教会の建物群のように、大企業に主導された形でソフトウエアが体系的に開発されていくウインドウズOSのような様式と、バザールにバラバラと人々が集まって来て市場が形成されるように、いろんな技術者がパーツとなるソフトウエアを持ち寄ってシステムを作り上げて行くリナックスOSのような様式を対比した概念です。

生物のシステムというのは、例えば「哺乳動物とはこうあるべきだ」みたいな形で整然と進化してきたというより、ウイルス感染とかトランスポゾンの転移とか、そんな偶然に持ち込まれた「モジュール」を利用して、思いもかけない「プラグイン」がゲノムというOSに付加されて進化が起こったような所があると思います。

つまり「バザール」による進化です。例えば、人間の知性を司る脳も、そういった「プラグインモジュール」の影響で発達してきたと主張されている研究者もおられます。

―ウイルスが、私たちを構成する「パーツ」になっているということですね。

中屋敷:そうです。そんなパーツがたくさんあるのです。

現在、多くの生物の全ゲノムが解読されていますが、どんな生物のゲノムにも、たくさんのウイルス配列が見つかっていますし、「ウイルスのようなもの」まで合わせると、ゲノムの半分以上を占めているということも決して珍しくありません。ものすごい数です。

そういう意味では、「すべての現存生物はウイルスと一体化している」と表現できるのかも知れません。それくらいウイルスは生物界に普遍的に存在しています。

「ウイルスは病原体」というのは、ウイルスを矮小化した見方だと思います。