日本人が意外と知らない!? 「トヨタ」が最強であり続ける本当の理由

売上27.5兆円。営業利益2.8兆円
酒井 崇男 プロフィール

「設計者」の定義がほかの企業と違う

Q:おもしろいのがトヨタにおける設計者の定義です。普通の企業では、設計者が利益や実現手段にまで責任を持つということは少ないのではないでしょうか?

酒井 はい。「トヨタ流設計者」というのが実は、本来の意味での「設計者」のことです。東大名誉教授で、畑村創造工学研究所代表の畑村洋太郎さんは、「世の中では設計者というと、図面を書く人のことだと誤解されていて困っている」ということを言っておられましたが、全くその通りです。実際の設計における設計者とは、

① 消費者が買う価値:商品性
② 利益(=売価−原価):売価は①の商品性で決まる
③ 上記①と②の実現手段:技術開発を伴う

の3つの事柄を主導する役割の人のことです。一般にはこれを広義の設計者と呼んだりもしますが、この上記3つが解決されたあと、つまり全部終わった後、線を引く作業は文字通り作業だということになります。

トヨタですと、車両担当主査(現在のチーフエンジニア)が、各サブシステムの基本設計者達と「消費者が買う商品性を、利益の出せる原価構造で実現する」ための設計を主導することになっています。つまり、トヨタで「製品の社長」とされてきた「主査」は、製品の価値を実現する設計者であると同時に、トヨタ流原価企画の責任者でもあるというわけです。

これは、いまでは何もトヨタに限った話ではなくて、米国でも世界的に成功しているメーカーでは常識的に行われています。

 

たとえばスティーブ・ジョブズは、こうしたトヨタの主査と同じ役割をしていた、ということに、うすうす気がついている日本の人は多いのではないでしょうか。彼らは広義の設計者と呼ばれる人達で、ジョブズのようなタイプは広義の設計者でありながら会社の社長を兼ねている人達です。豊田喜一郎や本田宗一郎、ソニー創業者の盛田・井深両氏はこうした種類の人達です。

ジョブズが、ソニー創業者の盛田さんを尊敬していたことを知っている人は多いでしょう。彼らは広義の設計者です。リーン開発の分野では彼らをESD型のタレントと呼んでいます。ESD(Entereprenure System Designer)とは起業家的システム設計者のことです。