創作は辛いけど楽しい。作家・朝吹真理子が見つけた「ものづくりの極意」

朝吹真理子×向田麻衣【第3回】

朝吹: 私は職業作家としての意識が希薄で、恥ずかしく思うことがあります。持ちたい、と思っているけれど、すぐに忘れちゃう。でも作家として食べていこうと思ったら、ちゃんと暖簾を開けて、定期的に書くことがきっと大事。でも同時に、そんなこと関係なく、降りてきたイメージをただ書く、その衝動や瞬間を大事にしたい。矛盾したままでいたい気持ちがある。

向田: 私はいつも創造や表現って狂気と隣り合わせで生み出すものだと思っていたけれど、ここ最近、健やかに作り続ける人たちにも出会って考え方が変わってきた。

たとえばこの連載でもインタビューさせていただいたISSEY MIYAKEのデザイナー・宮前義之さんは、デザイナーという肩書きだけれど、デザインもするし、ビジネスもするし、チームビルディングもする。そして彼自身は生きることに前向きで、もちろんコレクションの発表のプレッシャーははかりしれないけれど、作ることを楽しんでいる。彼からは、ビジネスと表現の両輪を回しながら、チームで健やかにものづくりを続けることができる、ということを学んだ。

世界に心を開いて、素直に愛情を伝える

向田: 真理子さんには以前からお話していたけれど、今年の3月に発表した「Message Soap, in time」という石けん。これは言葉が印刷された布地のメッセージカードが、ソープを使ってゆくとなかから顔を出すという商品。やっと完成した!

「Massage Soap,in time」HPより

朝吹: Message Soapはすごく素敵だと思う。さっそく、今はロンドン留学をしている妹のような友人のためにもとめました。麻衣さんのことを知らなくても、一消費者として見つけたら絶対に買っていると思うな。かけがいのない、たった一人の「あなた」のために存在しているものを買えることが嬉しい。

言葉が梱包された石けん。過去にその人のことを考えた時間が梱包されていて、しかも未来の時間も予め得られる。相手が浴室で肌をさらしている。いちばんプライベートな空間で、石けんからあらわれた言葉に触れる。選んだ時間、気づかずに触れていた時間が言葉が届いた瞬間に遡って浮かび上がってくる。ゆらゆらした時間をかたちにして渡すことができるのは、手紙とはまた違う、親密さと甘やかさがある。