作家・朝吹真理子が潜る”創作の海”
「イメージと言葉をつなぐ『チューブ』としての使命を全うしたい」

朝吹真理子×向田麻衣【第1回】

朝吹: 長編だと思うと、果てしなすぎてよくわからなくなってしまうのだけれど、息継ぎをしながら、短編を連作するようなかたちだったらできるのかな、と思って書き始めて。実際に書いてみると、短編のように閉じなくても言葉は放たれていった。

それからこれまでは、自分の作品を現実に生きている人が読んでいるという意識が希薄で、過去と未来に向かって書いている感じがしていたの。たとえば、作曲家の武満徹がすごく好きなのだけれど、故人である彼に向かって手紙を書くような気持ちで小説を書いていた。

でも長編を連載のかたちで発表することを決めたら、現在を生きている人が読んでくださる可能性があることに、ようやく気づきました。創作の海に潜る時にも、自分が生きている現在という時間はたしかに流れていて、私は現実をたしかに生きている。そのことに気づいたの。

私は誤読や誤配がすべてだと思っていて、物事は一つのことに決められないし、自由で誤りがあるほうが美しい。たとえばある人がある物語を自分で解釈して、それは誤読なのだけれど、そのほうがおもしろかったりする。私の小説を誤読や誤配のうえで楽しんでくれている人がいること、自分もそういうものに出会えたら僥倖だなって思う。

第2回】朝吹真理子の「ものがたり」の源流はこちらからご覧下さい。

朝吹真理子(Mariko Asabuki)
1984年、東京生まれ。慶應義塾大学前期博士課程在籍(近世歌舞伎)。2009年、「流跡」でデビュー。2010年、同作で堀江敏幸氏選考によるドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年「きことわ」で第144回芥川賞受賞
きことわ』朝吹真理子著
向田麻衣(Mai Mukaida)
Lalitpur 代表。高校在学中にネパールを訪問し、女性の識字教育を行うNGOに参加。2013年5月にネパール産オーガニックスキンケアブランドLalitpur(ラリトプール)をスタートしネパールの女性の雇用創出と自尊心の回復に取り組んでいる http://lalitpur.jp
『”美しい瞬間”を生きる』向田麻衣著