新たな冤罪の可能性も?オリンパス「巨額粉飾決算事件」に残されたナゾ

田中 周紀

取り調べは合計200時間超

その前にまず、検察側が描いたオリンパス事件のシナリオの概要をおさらいしておこう。オリンパスは1996年の時点で、保有する株式などの金融商品に約900億円もの含み損を抱えていた。

そこで同社の財テク責任者だった山田氏と森氏らは中川被告や、そのパートナーで「アクシーズ・アメリカ証券」会長の佐川肇被告、さらにはコンサルティング会社「グローバル・カンパニー」(GC)社長の横尾宣政被告、同社取締役の羽田拓被告、同社前取締役の小野裕史被告に巨額損失の処理策を相談。4人の協力を得て、タックスヘイブン(租税回避地)の英領ケイマン諸島に設立した簿外ファンドに損失を抱えた株式などを飛ばして隠蔽したとされた。

だが簿外損失は2003年3月期末に約1177億円にまで膨らんだため、山田氏や森氏らは07年3月期以降、国内のベンチャー企業3社や英医療機器メーカー「ジャイラス・グループ」の買収に著しく高額の費用がかかったかのように仮装。これを「のれん代」に計上し、11年3月期までの5年分の連結純資産額を粉飾した。

東京地検特捜部は12年3月に菊川、山田、森の3氏を証取法・金商法違反(虚偽有価証券報告書の提出)の罪で起訴。指南役の中川被告、横尾被告、羽田被告、小野被告も「虚偽有価証券報告書提出の共謀共同正犯」として起訴された。

さらに横尾被告と羽田被告はベンチャー企業3社の株式を著しく高値で外部の投資家に販売した詐欺罪に問われたほか、一審の公判前整理手続き中には小野被告を含めて組織犯罪処罰法違反罪でも起訴された。

中川被告と、横尾被告らGCグループは別個にオリンパスと関わっていた経緯があり、公判は分離されて行われた。金商法違反罪について検察側は共謀共同正犯を主張したが、一審判決では中川被告、GCグループの3被告がともに、より関与度の低い「幇助犯」として有罪になった。

金商法には幇助罪が存在しておらず、刑法を援用しての有罪判決である。中川被告と小野被告には執行猶予が付いたものの、詐欺罪でも起訴された横尾被告と羽田被告には実刑が言い渡された。

4人は控訴しており、2月17日の二審判決でこれを棄却された中川被告は、同月29日に上告したとみられる。GCグループの3被告の控訴審は7月5日から始まるようだ。

また米国在住の佐川被告は当初、米司法当局と司法取引したとみられ、日本での訴追を免れていたが、昨年10月に日本に一時帰国したところを証券取引等監視委員会(SESC)が告発、東京地検特捜部が在宅起訴した。こちらもまだ一審は始まっていない。

さて、事件の振り返りはこのくらいにして、本題の中川被告の公判に入ろう。

中川被告は12年2月16日に東京地検特捜部に逮捕され、翌月30日に東京拘置所から保釈されるまでの間、担当検事の過酷な取り調べを受けた。拘留された40日間の取り調べ時間は合計216時間49分にも及び、一日当たりの平均時間は5時間25分、最も長かった3月1日は休憩を挟んで7時間32分も続いた。