プーチン色に染まる世界 〜偏狭なナショナリズムが次々台頭する理由

トランプ現象と共鳴する新たな潮流
笠原 敏彦 プロフィール

その要点は次の通りだ。

・アサド政権は一時崩壊寸前だったが、ロシアの支援で生き残りに自信を持つようになった。

・欧州諸国はロシアがシリア難民を“兵器化”していると批判。空爆強化で難民流出に拍車をかけ、その受け入れ先である欧州を脅し、トルコを罰している。

・プーチンは、反欧州連合(EU)を掲げる欧州のポピュリスト政党を支援してきた。難民危機はこうした政党へのボーナスだ。EUが弱体化すれば、ロシアはウクライナやジョージア、ベラルーシなどの影響圏を維持し易くなる。

記事の中で衝撃的なのは、ロシアの軍事作戦の非情さだ。

反政府勢力が支配する地域では2月中旬、ロシア軍の意図的と見られる空爆で国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が運営する病院など複数の医療施設が破壊された。記事は専門家の分析を引用し、ロシアの狙いは、市民を恐怖に陥れて逃避させ、その地域により徹底的な攻撃を加えることだと説明している。

エコノミスト誌の記事の内容をぎゅっと凝縮するなら、プーチン大統領はシリア軍事介入の目的をほぼ達しつつあるということだ。

だから、ここで国連主導の和平プロセスへ移行し、アサド政権が奪還した支配地域を固定化する▽関係が悪化したトルコへの圧力としてシリアのトルコ国境沿いにクルド人自治区を確立する、ことなどを狙っているのだろう。事実上のシリアの分割である。

 なぜシリアに軍事介入したのか

ここから、問題の核心に入りたい。プーチン大統領がシリアに軍事介入した真の理由とは何なのかということだ。

この点についてはこれまで、シリア・タルトゥースにあるロシア海軍唯一の地中海に面した補給拠点の維持が目的だとか、中東での影響力拡大が狙いだとか説明されてきた。しかし、必ずしもそうではないようだ。

筆者は最近、軍事・安全保障戦略を担う欧州の政府・軍首脳らと話す機会があり、この疑問をぶつけてみたのだが、その答えは明快だった。

彼らはプーチン大統領の真意について異口同音に「ロシアを大国として復活させることだ」と断言したのである。外交だ、安全保障だと言ってもしょせんは人間がやることだ、ということなのか。