川崎老人ホーム連続殺人犯の元同僚が証言「私が見た”闇”の実態」

分刻みの労働管理、モンスター家族の圧力
中村 淳彦 プロフィール

――夜間、鍵は閉めますよね。

飯山 閉めますよ。一般的な窓に付いているロックはありました。それをやっても転落が起こるのだから、夜間帯だけでも窓は絶対に開かないようにするべきだと思いました。同僚も同じことを思っていただろうけど、直訴したのは僕だけです。それでも上層部は何の対策も打たなかった。廊下にカメラを設置することもなかった。

――3人も不審死して、周りの職員たちの反応はどうだったのでしょう。

飯山 誰かが転落させたとは、誰も考えていなかった。転落死した3人の他に、もう1人、今井が夜勤中に体調が急変して亡くなっているんです。12月、2件目と3件目の転落の間の時期です。でも、転落死が原因で辞める人はいなかった。事件があっても、みんないつものように淡々と仕事をしていました。

 

* * *

転落死に加え、虐待の映像で世間を震撼させた「Sアミーユ川崎幸町事件」。徹底した管理体制のもと、ただでさえ人手の足りない中で、モンスター家族の対応にまで時間を割かなくてはならず、精神的に追い詰められていく日々。さらにこうした実態に対する上層部の配慮に欠けた態度が事態を最悪な方向へと向かわせていた。

介護人材が圧倒的に足りない“介護2025年問題”を抱える中で、Sアミーユが目指した近未来の介護の姿を予見させる「徹底管理する合理的な介護」は脆くも崩れ落ちたのだ。

(つづく)

中村淳彦(なかむら・あつひこ)東京都生まれ。アダルト業界の実態を描いた『名前のない女たち』『職業としてのAV女優』『日本の風俗嬢』『女子大生風俗嬢』『ルポ中年童貞』など著書多数。フリーライターとして執筆を続けるかたわら介護事業に進出し、デイサービス事業所の代表を務めた経験をもとにした『崩壊する介護現場』が話題に。最新刊は2月25日『熟年売春~アラフォー女子の貧困の現実』(ミリオン出版)。