川崎老人ホーム連続殺人犯の元同僚が証言「私が見た”闇”の実態」

分刻みの労働管理、モンスター家族の圧力
中村 淳彦 プロフィール

――そうして、徐々にと虐待映像にあったような荒い介護が芽生えてしまったわけですね。

飯山 業務に追われていて、しかも基本的には利用者と1対1の介護対応ですから、他の職員が具体的にどんな介護をしているのかはわからない。僕は施設長の交代の頃は、不安で苛々しながらもなるべく荒くならないようにと自制を保っていました。

* * *

施設長が変わって約1ヵ月。現場の職員が複雑に絡まった環境下でストレスをためる中、2014年11月4日、ついに1度目の転落死事件が起こる。

 

転落死は「なかった」かのような振る舞い

――転落死が起こって、現場職員たちはどんな様子だったのでしょうか。

飯山 連続して事故が起こり転落死を受けて現場はバタバタしだした。でも、あんなに大きな事故が起こっているのに安全対策もしないし、僕らへのケアもなかった。事故についての説明もない。「うちの施設は何をやっているんだ!?」という、不信感が上層部や施設長に対して芽生えました。

――上層部は転落死事件で混乱しているけど、末端の介護職員はいつも通りライン表に従って忙しい通常業務をしていた。

飯山 僕らは何が起こったのかをはっきりしてほしかった。やっぱり、事故をどうして防げなかったのかっていう思いがあった。

最初の87歳の男性を含め3人が転落しても、落ちないようにするための検証や防止策は何もしていなかった。例えば窓の鍵を二重にすれば、万が一あけても防げるかもしれない。当時は故意で落としたなんて、誰も思っていなかったから。

――さすがに同僚が転落させるとは誰も思わない、普通の事故として考えていた。

飯山 最初は全員が事故としか思っていなかった。12月に2件目の転落死が起こって、そのときは呪いとか、もうオカルト的な話になりました。1度目に転落死した男性の部屋に2度目に転落した方が入所していたのだから、なおさらです。さらに3件目で本当の本当にヤバイよ、ってなりました。

3件目が起こって、今井が夜勤から外れたんです。会社が今井を疑っていたのか、行政と警察に指導されたのか。会社も僕らには詳しい理由を話さなかった。

――120㎝の柵を超えて飛び降りたとしていたのなら、簡単なことでも対策とらなきゃならないのに。

飯山 本当に何の対策もなかった。だから僕は耐えられなくなって3件目の事件の後、どうして対策をとらないのかと施設長に直訴しました。施設長は「窓が開けられないのは、ご本人様の自由を奪う拘束になるからできません」という返答だった。「じゃあ、4人目が落ちないと何もできないのか」と怒鳴った覚えがあります。