川崎老人ホーム連続殺人犯の元同僚が証言「私が見た”闇”の実態」

分刻みの労働管理、モンスター家族の圧力
中村 淳彦 プロフィール

今井容疑者が抱いていた不満

モンスター家族の息子が介護職員たちに渡した手書きのメモを見せてもらった。電気の点け方からテレビを切る時間、洗濯の仕方、掃除の仕方まで指示してある。(1)から(19)まで箇条書きされた文字から、徹底的に業務管理をされている介護職たちが精神的に追い詰められる様子が透けて見える。

モンスター家族の息子が書いた職員に対する書面の一部。テレビの視聴時間など細かい指示が出されている。(提供・飯山氏)
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飯山氏は現場が崩壊のきっかけとして2014年10月の施設長交代を挙げている。本来ならば法人や施設上層部が職員たちの負担を察してフォローをするのが一般的だが、「Sアミーユ川崎幸町」ではそれが一切なかったという。

――当時、運営法人・積和サポートシステムズは「Sアミーユ」を月1棟のペースで新設していました。この拡大計画は介護職の人員不足の中で無謀だったという印象があります。

飯山 僕が入職した頃は、みんな真面目だったし、職場のモチベーションはそれなりに高かった。けれど、施設長がコロコロと変わっていくうちに、どんどんおかしな状態になりました。現場が乱れるというか…。

――優秀な施設長が新設施設に移るので、施設上層部が流動的だった。

飯山 社内の人事異動です。最初の施設長は尊敬できる方で、入居者全員のことも把握していたし、職員のことも考えてくれていた。その人が新しくできる施設に異動したのが2014年10月、最初の転落死が起こる1ヵ月前です。

後任に就いたのが、口では理想を語るけど、介護をやったことがないような人だった。施設長が変わってから、仕事が円滑にまわらなくなりました。「あいつに相談してもしょうがないし」という雰囲気が職員に蔓延していた。

 

――上層が実態のない理想を語ってマネジメントを怠ると、現場は当然荒れますよね。

飯山 本当にガラリと変わりました。今井も新しい施設長が大嫌いで、「なんなの、あいつ。仕事できないクセに」って言っていました。前の施設長は80部屋ある入居者の状況をすべて把握していたので、指示が適切だった。「○○さん、今日は体調悪そうだから」とか、利用者をちゃんとみていたし、僕らの悩みも聞いてくれる人だった。

――「お客様の一人一人に合わせたケアを」といった理想論は、介護施設によくある人権に寄った言葉です。現場は分単位で管理されているので、個別対応ができるワケがない。

飯山 そういうことです。「一人一人に合わせたケア」と言っている施設長本人が現場の状況を何もわかっていない。理想ばかりで、何もできないじゃないかって。それで職員みんなが「は?何言ってるの?」という気持ちになりました。目に見えて荒れるわけじゃなくて、だんだんと精神的に追い詰められていきました。

みんなが慕っていた前施設長がいなくなったという気持ち的な不安もある中で、綺麗ごとばかり聞かされ不満が拭えない状態でした。