植物を植えてもCO2は減らせないって、知っていましたか!?

身近な問題を「地球スケール」で考える
更科 功 プロフィール
〔photo〕gettyimages

植物を植えても、CO2は減らない

さて、進化の説明がおわってしまった。もう、あなたは進化について完璧に理解したことだろう。もう、私から教えることは何もない。それでは身近な問題を、進化的観点から少しだけ考えてみよう。地球の温暖化である。

地球の温度を上げている原因の一つは、大気中の二酸化炭素の増加である。そこで、二酸化炭素の増加を防ぐために、自動車の排気ガスの規制などをしているわけだ。

 

でも、もっといい方法がある。植物を植えればいいのだ。植物は光合成をするために、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。工場や車から放出した二酸化炭素を吸収してくれるだけでなく、私たちが呼吸する酸素も放出してくれるわけだ。これなら人口が増えても大丈夫である。実にすばらしいことだ。

しかし、残念ながら……こんなうまい話は存在しないのである。

種子が育って樹木になり、それが枯れて土に戻る。これを植物の一生だとすれば、植物が一生の間に放出する酸素の量と吸収する酸素の量は(あるいは吸収する二酸化炭素の量と放出する二酸化炭素の量は)、じつは同じになるのだ。

そんなバカなと思う人もいるかもしれないが、これは疑いようのない事実である。これを、光合成のしくみから確かめてみよう。光合成を一番かんたんな式にすると、以下のような式になる。

二酸化炭素 酸素 炭素
CO2  → O2 + C

つまり光合成というのは、二酸化炭素を酸素と炭素に分解することなのだ。そして炭素は植物の体になる。

ところで植物は呼吸もしている。呼吸の式は光合成と逆の反応である。また植物は、枯れると腐って分解される。分解の式も呼吸の式と同じで、光合成の逆の反応になる。そこで、光合成と呼吸と分解をまとめると、以下の式になる。

二酸化炭素 酸素 炭素
CO2  ⇔ O2 + C

    → 光合成

    ←呼吸・分解

植物が生まれる前の状況は、左辺ということになる。植物はまだ種子なので、生長した樹木とくらべれば、無視できるほど小さい。これから植物体を作っていく炭素は、まだ二酸化炭素の状態で大気中にただよっているのである。

植物が生長していくにつれて、式は右辺に移動していく。光合成によって二酸化炭素は分解され、出てきた炭素は植物体に取り込まれるわけだ。そして生長が止まれば、右辺は増えも減りもしない。光合成と呼吸がつり合っている状態だ。そして枯れて分解されれば、全てが左辺に戻るので、もとの木阿弥になるわけだ。

結局、植物を植えても、酸素が増えたり二酸化炭素が減ったりするのは一時的なもので、植物が枯れれば、大気中の酸素も二酸化炭素ももとの量に戻ってしまうのだ。