電通マンが実践する「鬼気くばり」の極意を見よ!

ホイチョイ・プロダクションズ

人の心を動かすもの、とは

博報堂の新入社員も研修期間中にビジネスマナーの講義を受けるそうだが、そこで教わるのは「得意先を不愉快にさせないことが基本」という原則論だけだという。原則論だけでは、得意先が吸ってるタバコを飲みの席に持って行ったり、ペンを2本持ち歩いたりといった小技は、身につかない。そういった細かな気くばりの技術は、会社全体で蓄積し、キチンと系統立てて教育しなければ伝承されてゆくものではない。

そして、そういう電通の細かな気くばりは、実は立派なクリエイティブなんじゃないかと、あるときからリスペクトするようになった。

このことは、選挙に例えるとわかりやすいかもしれない。

どんなに優れた政策を掲げた政治家でも、選挙に当選しなければ腕の振るいようがない。そして、選挙に強い政治家とは、必ずしも、優れた政策を実現する能力に長けていたり、時勢を正しく見極めることができる政治家ではない。

選挙に強い政治家とは、ドシャ降りの日に傘もささずにビール箱の上に立ってズブ濡れで街頭演説をつづける、真夏に長靴をはいて田んぼに入って農家のお年寄りの作業を手伝う、あるいは、村祭りの盆踊りの輪でわざとみんなと逆回りに踊り、すれ違う選挙民にニッコリ微笑みかけて顔を覚えてもらう――そういった、人に媚びるための泥臭いおべっかのノウハウを持った政治家である。

ビジネスも同じだ。どんなに優れたクリエイティブ力やメディア・プランニング力を持っていても、まず得意先に気に入られ、使ってもらわなければ、腕の振るいようがない。

企業のトップに立つような有能な人間は、前述した通り、その能力が高ければ高いほど、即効性のあるリアルな気くばりを求めている。彼らは、自分が購入を決断する高額商品は、それがクルマであれ、マンションであれ、生命保険であれ、会社の広告キャンペーンであれ、すべて、自分に対してどれだけ有効な気くばりがなされたかで購入先を選ぶ傾向にある。

結局のところ、人の心を動かすのは、人の気くばりなのだ。