プロ野球からノンプロへ
〜正田樹、河原純一……男たちの葛藤と、再出発の物語

週刊現代 プロフィール

その後、'09年オフに受けたトライアウトでロッテから声がかかり、山田はNPBへと復帰を果たす。しかしまたも結果は残せず、'12年オフに再び戦力外に。ただ、最初のクビ宣告のときとは、まったく気持ちは違っていたという。

「上手く行かなくても、以前のように腐ることはなかった。戦力外も受け入れられました。ただ一方で、まだ気持ちが残っているんだから、もう少しプレーを続けたいとも思ったんです。年齢やレベルに関係なく、向上心さえあれば野球を楽しめることを、独立リーグでの経験を経て知りましたからね。

そんなとき、声をかけてくれたのがミキハウスでした。いま、プロに戻りたいという気持ちは……1割くらいですね。現役である以上、少しは残しておこうという感じ。とにかく、いまが人生で一番野球を楽しめている。それが、僕が現役でいる理由です」

戦う舞台にこだわらず、自分の野球人生を全うしようとする正田や山田のようなベテランたちがいる一方で、プロに戻るという執念を燃やし続ける男もいる。

BCリーグ・武蔵ヒートベアーズで内野手を務める角晃多(25歳)。

関東の強豪・東海大相模の4番として高校通算36本塁打を放ち、'08年に育成3位でロッテへと入団した角。かつて巨人のストッパーとして活躍した名投手・角盈男の息子ということもあって注目を集めたが、23歳でクビを宣告された。

角が語る。

「それまで野球しかやってこない人生でしたから、クビになったときは、ポツンと置いていかれたような気持ちになりました。孤独感というんでしょうか。育成で入って3年間結果を出せなかったので、『違うことをやったほうがいいのかも』という迷いも確かにあった。でも、父に相談して『やりたいのか、やりたくないのか』と聞かれ、気持ちがはっきりしたんです。プロの一軍でプレーすることを目指して、ずっと野球をやってきた。その思いは、簡単に消えるものではありませんでした」

残された時間

若いだけに、角にはいくつかの社会人チームからも声がかかった。大企業を母体とするそれらの球団のほうが、独立リーグよりも待遇はよかっただろう。しかしそれでも、角はあえてベアーズを選んだ。

「その理由は、独立リーグがNPBへの最短ルートだと思ったからです。プロへ戻る、戻る、戻る。昨シーズンもそれだけを考えてプレーした。ただ、だらだらと続ける気はありません。あと1年で結果が出なければ、きっぱり辞めようと思っている。だから今シーズンが終わってプロへ戻れなかったとしても、『もう野球はいいや』と言えるくらい、悔いのないように思い切りやるつもりです。

もちろん、一度クビになった人間が戻るには、圧倒的な成績を残す以外にないことも理解しています。去年、BCからオリックスへ入ったカラバイヨが打率3割9分でしたから、僕も4割を目指さないといけない。プロへ戻れるなら、すべてを賭ける覚悟です。僕にとってプロというのは、それくらい価値のある舞台なんです」