山田哲人の内角打ちに見た「打撃の神髄」〜静の中に動がある

スポーツコミュニケーションズ, 上田哲之

神髄は静止した軸

近年の内角打ちの名シーンといえば、まず思い出すべきは、昨年の日本シリーズ第3戦だろう。ヤクルト山田哲人が史上初の三打席連続ホームランを放った、あの試合だ。

10月27日。福岡ソフトバンク対ヤクルト戦、5回裏2死一塁。ソフトバンクの投手は千賀滉大。そして打席に、ここまで2打席連続ホームランの山田。千賀は150キロを超える速球が武器のリリーフ投手である。

(1)インハイ、ストレート、150キロ ファウル
(2)高めに抜けたストレート、151キロ ボール
(3)フォーク、135キロ 見逃し ボール
(4)インハイ 頭部近くを襲う152キロ 山田のけぞってよけて、カウント3-1
(5)インハイ ストレート レフトスタンドへホームラン!

捕手は低めに構えているから、ストレートが抜けたのかもしれない。しかし、148キロのストレートがインハイいっぱいに入ったのを、山田は、ものの見事に真芯でとらえ、完璧に振り抜いてホームランにした。

これだけ鮮やかなインコース打ちは、そう見られるものではない。私は永久保存にするけれども、日本中の各ご家庭で永久保存にしていいのではないでしょうか。

で、トリプルスリーを達成し、今や日本を代表する強打者に成長した山田だが、彼の打法は、大きく左足を上げて、タイミングをとってスイングするところに特徴がある。この大きく足を上げてステップする打法は、やはり日本人には似合っているのかもしれないなあ、とつい思う。

だが、それは見方が逆なのだ、とあえて言ってみたい。

山田の3連発、とくにインハイを打った3発目のビデオを繰り返し見ていると、次第に自分の視線が、大きくふり上げる左足から、その奥、すなわち右足側に移っていくことに気付く。なぜなら、左足以外の身体の部分がどこも、ピクリとも動かないのだ。右足に乗った体側、腕、頭。ピターっと静止し、スイングの始動とともに、一気に回転する。

一見、「動」に見えるバッティングフォームは、動かざること山のごとしと言いたくなるほど、きっちり軸に体重が乗って静止した形によって支えられているのだ。

秋山翔吾(埼玉西武)も中田翔(北海道日本ハム)も、柳田悠岐(ソフトバンク)も、みんな足を上げる。しかし、そのフォームの神髄は静止した軸のほうにこそある(柳田は、たしかに足を上げるけれども、本質的にはすり足打法なのかな、と思いますが)。