香気にもうまみにも理由あり プロも知らない「コーヒーの謎」!

「おいしい」と「まずい」の差は?
旦部 幸博 プロフィール

科学の知識があればもっと愉しめる!

じつは私自身も、その「コーヒーと科学の両方に興味がある」にあてはまる1人です。コーヒーに興味を持って本格的に趣味としてはじめたのは、今の一つ前の大ブームにあたる喫茶店黄金時代(1970〜80年代)の終わり頃で、以来、同好の士やコーヒー屋さんと交流しながらコーヒーを楽しんでいます。

その間、自身の体験や知人とのやりとりの中で、例えば「焙煎のやり方で味が変わるのは何故だろう?」「そもそもコーヒーの香味の正体は何?」など、いくつもの「なぜ?」に出会ってきました。

なにせ科学者が本業のため、知合いにいろいろ訊かれることも多いのですが、これがなかなかの難問ぞろい。簡単に答えられる疑問ばかりではありません。

ここ十数年ほどは、国内外の学術論文を手当たり次第に読んで、コーヒーのさまざまな「なぜ?」に対する答えを集めつづけてきました。正直、骨は折れますが探究心をくすぐられる、じつに愉しい知的活動です。

こうして蓄積してきた知識をこのまま自分だけのものにしておくのももったいない……そんな思いから、前著『コーヒー おいしさの方程式』(NHK出版)では、以前から交流がある「コーヒー界のレジェンド」こと南千住カフェバッハの店主、田口護氏とともに、田口氏が長年の実践で培ってきた経験知と擦り合わせながら、コーヒーの科学知識の一端を紹介しました。

そして今回の『コーヒーの科学』では、その書名の通り、もう少し「科学」の部分にフォーカスを当て、抽出や焙煎はもちろん、コーヒーにまつわるさまざまな事象について、生物・化学・物理・医学などの自然科学の視点から、幅広く解説しています。

コーヒーは嗜好品ですから、何よりもまず「飲んでおいしい」ことが大事です。しかし深く識ることで、その味わいもまた深まります。

本書はコーヒーのことをほとんど知らない人でも、科学の素養があればコーヒーについて一通りのことが理解できるよう、知識の土台になる部分をしっかり押さえて書いたつもりです。また逆に理科や科学に自信がなくても初心者程度のコーヒーの知識や経験があれば、自分の経験と照らし合わせながら読み進められるでしょう。

もちろん基礎的な内容だけでなく、長年コーヒーに携わってきたプロの方も初めて聞くような最新研究までカバーしており、上級者にも読み応えのある内容だと思います。

「奥深いコーヒーの世界」愉しんでいただければ幸いです。

(文/旦部幸博・滋賀医科大学学内講師)