あなたは「合わない人」を許容できますか? 『発達障害の素顔』

”発達障害”を理解して環境に対処する
山口 真美 プロフィール

誰もがデコボコを抱えて生きている

これまでは経験として語られてきた思春期までの発達が、脳科学が進み、脳の発達から再考されるようになりました。発達過程で生じるさまざまな問題――虐待やいじめが脳におよぼす影響についてより詳細に解き明かされつつあります。

本書でも紹介したように、社会関係は、2~3人の親しい仲間から、より大きなグループ、そして異性へと、段階を追って発展していきます。長い発達の期間で作り上げられていく脳に振り回されがちな心のバランスをキープし続けることは、難しいのです。

新聞記事で目にするような「いじめ」「ひきこもり」「虐待」は、そんな心の成長の中で誰もが遭遇する可能性のある事態であり、自身が遭遇しなかったことは幸運なだけで、特別なことではないのです。誰もがそうした事態に陥る危険と隣り合わせていることが、思春期すぎまで繰りひろげられる心と脳の特性から窺い知ることができます。

たとえば青年期まで成長し続ける扁桃体は、恐怖の感情を制御します。大人と姿かたちは同じように見えても脳は未熟で、それは思春期の非行や青年期の薬物依存の問題などを証拠づけるものです。

発達障害の素顔』では、発達障害を視覚や聴覚などの感覚の特異性としてとらえ、それぞれの発達からさまざまな個性へとスペクトラムとして広がる発達障害について説明しました。

もちろん発達障害が抱える問題は大きく、個性で片づけられるものではありませんが、自身の延長線としてその感覚や見方の特異性を理解することは大切でしょう。

私たちはみな、それぞれデコボコを抱えて生きています。人間関係の中で、苦手だと思う人はいませんか。相性が悪いと片づけるのは簡単ですが、そこには互いの「見方の違い」が隠されているかもしれません。

マイペースな人もいれば、周りに過敏に反応して対応する人もいます。几帳面に管理したい人もいれば、その場の状況に合わせて柔軟に対応する人もいます。

環境の受け取り方と対処の仕方にはさまざまあるので、時には合わないこともあるのは、自然なことです。

この本が、あなたの心を知る手掛かりになれば、そして、現代社会の社会環境を見直すきっかけになればと思います。

読書人の雑誌「本」より