サラバ社畜人生!40歳で大企業を辞めた男たちが教える「稼ぐ思考法」

井上 久男 プロフィール

そう感じ始めた頃、前職時代に知り合った米国人がアマゾンの魚を輸出するビジネスを始め、その知人からアマゾンにはチョコレートの原料となるカカオの親戚にあたる「クプアス」という果物があることを教えてもらった。長澤氏は「新しいチョコレートができるのではないか」と直感し、何度かブラジルに出向いて市場化調査をした。

安定的な供給が難しいことなどからチョコレートの新事業は断念したものの、アマゾンの関係者との「ご縁」ができた。「アマゾンでは森林再生と融合したような『アグロフォレストリー』と呼ばれる生物多様性を採り入れた農業が展開されていましたが、マーケティングがお世辞にも上手とは言えませんでした。このビジネスをうまくやれば、経済と環境の両立にもつながる。そう考えるようになると、夢が広がり、チョコレートだけを考える無意味さを感じた」と長澤氏。

2002年12月、故郷の神戸・三宮で広さ4坪ほどのアマゾンフルーツのジュースバーを開業した。手持ち資金もなく、開業資金300万円は国民生活金融公庫から借りた。アマゾンの伐採された荒廃地を果物やスパイス、カカオなど複数の作物を栽培しながら森林として再生・保護する生物多様性の農業「アグロフォレストリー」に惚れ込んでの起業だった。

「アマゾンと日本をつなぐビジネスをしようと考えましたが、経済と環境の両立を訴えても、最初、消費者は見向きもしてくれなかった。そればかりか、アサイーは怖がられるほど紫色が濃く、しかもジュースにするとドロドロした感じがするので、『泥を飲ませるのか』といった苦情が来たことさえあります」

その時に役立ったのが京セラで叩き込まれた「自分の土俵で相撲を取れ!」という考え方だった。「自分の得意技であるマーケティングのノウハウを活かして全く新しい市場を創り、アサイーの短所を長所に変えられないか」と考え続けた。

アサイーのこの色こそがポリフェノールで、濃いということは栄養が豊富な証拠。果実を天然のサプリメントとして位置付け、「本物の味は違う」とアピールしながら「スーパーフード」という新市場を広めた。うまくメディアにも取り上げられ、「一杯のジュースで森林再生」というキャッチフレーズに共感を呼ぶことにも成功した。

長澤氏は言う。「世の中には不都合、不合理、不条理といった3つの『F』が渦巻いている。それに文句を言うだけでなく、自分で解決しようと動くことで、誰にでもビジネスチャンスはある。その時に大切なのがビジネス観。ビジネスとは単に金儲けではない」。

あるべき姿や理念を優先して追求することで、利益は後から付いてくるということでもある。

日本最高クラスの年収でも会社を去った理由

米倉裕之氏(49)も40歳の時、東京海上日動火災保険を退職した。そして、2012年からビッグデータを活用するマーケティング会社の「カスタマー・コミュニケーションズ(CCL)」(本社・東京都)の社長を務める。CCL社はかつて経営危機に陥ったが、その再建を裸一貫で引き受け、新しいビジネスを展開しようとしている。

米倉氏のビジネスマン人生は波乱万丈だ。東京大学農学部卒。大学時代は鰻の養殖を研究していたが、人と関わる仕事がしたいと考え、商社や損保を就職活動で回った。東京海上時代は、花形部門と言われる船舶営業部や経営企画部などで働き、5年間の米国駐在期間中にはシンクタンクのブルッキングス研究所にも出向、期待をかけられた人材だった。