2016.03.02

サンダース旋風がヒラリーに与える「党内外圧」

スーパーチューズデーの焦点【民主党編】
渡辺 将人 プロフィール

焦点はヒラリーの「勝ち方」

もちろん、トランプ旋風との相互作用も今回のサンダース旋風を後押しした。

トランプのイベント会場では必ず若者が抗議活動をしているが、筆者がアイオワで訪れたトランプの演説会では、演説中のトランプがトマトを投げられる事件もあった。犯人はその場で逮捕された。

興味深いのは、彼ら「反トランプ」デモの主体の少なからずが、サンダース支持者であることだ。彼らは座り込みの際に「サンダース」のサインやTシャツを隠さない。トランプが台頭すればするほど、サンダース支持の若者が「反移民」的なトランプに怒りの声を上げ、それが左派旋風を動かしている。

いずれにせよ、サンダースが指名を取る可能性が高くはない中、焦点はサンダースの「粘り方」、ヒラリーの「勝ち方」になる。サンダースが代議員数の多い州で、比例配分でどれだけ代議員を獲得できるかだ。ヒラリーは特別代議員を上乗せすれば、容易に勝利できるが、理想論としては特別代議員の積み増しなしでサンダースに圧勝しておきたい。

「特別代議員はワシントンのエスタブリッシュメントであり、草の根の民意ではない」という声が高まれば、サンダース支持者を本選で囲えなくなる。つまり、スーパーチューズデー以降は、ヒラリーにとって、勝敗のみならず、民主党候補としての「正統」の説得性を高める戦いになる。

サンダースは指名が取れなくても、代議員数で相当程度の善戦をすれば、「ヒラリー独走へのノーの意思表示がこれだけ党内にあったのだ」と言えるわけで、ヒラリー陣営も本選に向けた中道回帰を乱暴には進められなくなる。

2人しか候補者がいない民主党予備選で、表面的な勝敗をウォッチしてもあまり意味がないとも言えるが、「粘り方」「勝ち方」が定義する民主党内の空気は、TPPの連邦議会批准を始めとした諸政策の動向に影響を与えることが予想され、注視しておくべきだろう。

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渡辺将人(わたなべ まさひと)
1975年東京生まれ。北海道大学大学院准教授。シカゴ大学大学院国際関係論修士課程修了。早稲田大学大学院政治学研究科にて博士(政治学)取得。ジャニ ス・シャコウスキー米下院議員事務所、ヒラリー・クリントン上院選本部を経て、テレビ東京入社。「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者として総理官 邸・外務省担当、野党キャップ。コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の変貌』(名古屋大学出版会)、『アメリカ西漸史』(東洋書林)など著書訳書多数。

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