サンダース旋風がヒラリーに与える「党内外圧」

スーパーチューズデーの焦点【民主党編】
渡辺 将人 プロフィール

ヒラリーと部分的には重なる「物語」を持つウォーレンだが、ライフワークの金融規制では原理的で、オバマ政権のTARP(不良資産救済プログラム)監視パネルでもガイトナー財務長官らと激しくやりあった。

オバマ大統領側近のピート・ラウスらの説得を受け、2012年の連邦上院選に出馬。亡くなったエドワード・ケネディ上院議員の議席を共和党から取り戻した。

まだ1期目だが、議員になる前の経験の厚みがそれを感じさせない。

ちなみにオバマも上院1期目で大統領になったが、今回共和党で善戦しているルビオ、クルーズもいずれも上院1期目。「反エスタブリッシュメント」「反ワシントン」が好まれる昨今、連邦議員で再選を重ね過ぎると大統領のチャンスからは遠ざかるという妙な傾向がある。

「バーチャル候補」として「内圧」を与える

サンダースと違ってウォーレンは女性でもあり、ヒラリーにはより脅威だった。

ウォーレンはブルーカラー、高齢者、アフリカ系の女性などすべてのリベラル有権者に人気があり、アフリカ系票で苦戦するサンダースよりも強力な候補になっていた。サンダースの民主社会主義路線に眉をひそめる民主党支持者も、不思議と「ウォーレンなら投票する」と答える。

そのウォーレンはあえて今回出馬しないで、外からプレッシャーを与える役割に徹している。「ニューヨーカー」誌の政治記者ライアン・リザは、ウォーレンを「バーチャル候補者」と名付けている。

すなわちサンダースは、反格差、反ウォール街をめぐる「表の候補」で、ウォーレンが「見えない候補」「バーチャル候補」として、ヒラリーと民主党中道派にリベラル寄りになるように外圧ならぬ「内圧」を与えてきた。

結果、ヒラリーは経済政策ではTPP反対、キーストーンパイプラインにも反対と経済ポピュリズム路線を採用せざるを得なくなり、今やサンダースと表面上の政策は、銃規制や安保以外では違いが薄くなってきている。

誤解を恐れずに言えば、サンダースを支持する活動家達の真の狙いは、サンダースを大統領にさせること自体にはない。それは不戦勝的な展開でもない限り「ロングショット」(高望み)であることは、民主党内のリベラル派であってもオフレコ前提ならほとんどが認める。

「政治革命」運動の狙いは、大統領選挙を通してリベラル派の支持基盤を活性化して、党内の主流政策を左に引き寄せることだ。本選でさりげなく中道に戻る際のエクスキューズが見当たらなくなるほどに、政策転換の言質を取ることである。そして将来的に別の選挙年にチャンスがあれば、ウォーレンが勝ちに行く「表の候補」として出る。

これがサンダース=ウォーレン派の2段階のリベラル革命であり、ヒラリーはサンダースとの代理戦に手を焼いている一方で、「見えない候補」のウォーレンとその支持層と刃を交えている。