丸山ゴンザレスが見た「破綻国家」ギリシャの現実〜難民の後を追って、裏路地を行くと…

丸山 ゴンザレス プロフィール

売春婦も食えない国

「女の子はギリシャの子なの?」
「うちのはポルトガルとルーマニアだよ」

やはり働いているのは外国人。実はギリシャ人はカップルのセックス回数が世界一といわれるほど性的に奔放とされる反面、「プライドが高いため、売春はしない」と聞いたことがある。

「プレイの値段は?」

しつこく食い下がる私におばさんは面倒くさそうに言った。

「ノーマルセックスは10ユーロ。それ以外はダメだよ」

10ユーロ! これは予想外の金額だった。日本円で1400円(取材当時のレート)だ。

実は、ギリシャでは売春が合法化されている。職業的に売春婦が許容されることに加えて、海外からの出稼ぎ売春婦が多い土地柄だ。特に04年に開催されたアテネ五輪の際には、売春業界もバブルのように盛り上がったらしい。その分、値段も膨れ上がったという。

その後、次第にギリシャの不景気とともに他の欧州諸国より相場が安くなったが、それでも40ユーロ(約6000円)ぐらいと聞いていた。だが、私に提示されたのはそのさらに四分の一。これほどの価格は発展途上国でも見たことがない。

強制的に搾取されているならいざしらず、合法的な管理売春業の場合は、店と売春婦の折半が基本である。

となるとギリシャの売春婦たちは一度に5ユーロしか利益を得られない。何人を相手にするのかはわからないが、10人相手にしても50ユーロに過ぎない。これで暮らしていくことができるのだろうか。余計なお世話ながら心配になってしまった。

さらに気になるのは「ノーマルセックス」だ。意味がわからないが、おばさんが苛ついているので聞くわけにもいかない。とりあえず「そうですか」と返事をすると、いよいよ本気で追い出しにかかってきた。

「とっとと帰っておくれ」
「はいはい」

追い立てられるように店を出た。これまで暗く沈んだ雰囲気に見えていた路地が急に大人の社交場のように思えたのは、この通りの正体を知ったからだろう。しかし、気になるのはやっぱりおばさんの言っていた「ノーマルセックス」である。