日本の犯罪報道、ここがヘン!〜だから、治安がいいのに「犯罪不安」が止まらない

牧野 智和 プロフィール

情報を圧縮しすぎる日本の報道

まず、紙面の全体的な傾向から考えてみましょう。

下の表は15紙について、1ページあたりの平均記事数、調査対象とした一週間における犯罪関連の記事数、社会面における犯罪記事の割合について整理したものです(海外の新聞には「社会面」が存在しないので、「National」という国内の出来事を扱うブロックを分析しています)。

2012年5月14日から5月20日までの一週間分の記事を集計

この表で最も注目したいのは、1ページあたりの記事数の違いです。各ページに記事の詰め込まれた日本の紙面構成は各国共通の「当たり前」ではありません。紙面サイズの違いも関係していますが、海外の新聞ではそれ以上に、一つひとつの出来事を掘り下げて伝えようとする確固たる傾向があります。

限られた紙面に多くの記事を詰め込む日本の新聞と、比較的ゆったりした構成のなかで一つひとつの出来事を詳細に報じていく米英の新聞。具体的にどのように事件が報じられるのでしょうか。

日本における事件報道1件に費やされる平均文字数は大体300字前後なのですが、それに比較的近い文字数の記事を例に「日本の事件記事の典型例」をまずみてみましょう。具体的な情報は一部伏せます。

「1日午後3時15分ごろ、○○県○○市○○町○○丁目の路上で、帰宅途中の小学2年の女児(8)が、何者かに刃物で切りつけられた。女児は脇腹の付近に数カ所の切り傷を負って病院に搬送されたが、傷はいずれも浅く、命に別条はないという。○○県警は殺人未遂事件として調べている。

県警によると、女児は現場から数百メートル離れた自宅まで歩いて帰宅し、母親が110番通報した。女児は警察官に『後ろから近づいてきた男に、果物ナイフのようなもので切りつけられた』と話しているという。

現場はJR○○線○○駅から北西に約2キロの住宅街。付近では11月18日、今回の現場から約2.5キロ離れた○○川対岸の○○県○○市○○丁目で、下校途中の女子中学生が刃物で切りつけられ、あご付近に切り傷を負う事件があり、県警で関連を調べている」『朝日新聞』2011.12.2朝刊)

このように、日時、出来事、警察の捜査状況、現場の状況が一挙に書き出されるのが日本の新聞における事件報道の基本形だといえます。多くの事件はこのように圧縮された「出来事についての情報」として伝えられ、事件の注目度が上がると割かれる文字数が増えて背景や解説、識者のコメントなどが掲載されるようになります。