「資生堂ショック」いまだ収まらず~「産まない女子」と「産んだ女子」が職場で大ゲンカ

「逆マタハラ」という恐怖
週刊現代 プロフィール

女性に優しい会社が、育児中の女性たちに出勤を促す制度を取り入れたというこの事態を、昨年11月、NHKが「資生堂ショック」として取り上げると、当事者たる世の働く女性たちから賛否が百出した。

この制度改革の背景にあった事情を、ルディー氏が解説する。

「資生堂では当時、時短勤務のBCが10年前の約3倍にまで増えており、午後5時以降の遅番の時間に入れる人が非常に少なくなっていたんです。この時間帯は、会社帰りのお客さんで込み合う繁忙時。

そのシフトが独身者など一部の社員だけに集中しており、彼女たちから、『このままでは回らない』と不満の声が上がりました。子育てをしている社員への支援が原因で職場に軋轢が生まれ、その結果、制度が変更されたんです」

「また産むの!」

つまり、「産まない女子」が「産んだ女子」の優遇に反旗を翻したという構図である。もとより少子化の時代。子供を産み育てることが大事なことは分かっているが、「産まない」自分が「産んだ」人のために身を削るのはやるせない――。

この問題提起に、「産まない」側からの共感、「産んだ」側からの反感が入り乱れて、女子同士の大論争に発展した。それだけ、同様の構図を抱えた企業が多いということだろう。

育休や子育て支援制度を利用する社員が増えることで、残る社員たちにしわ寄せがくる事態は、一般に「逆マタハラ」と言われる。制度を利用しない社員にとって、同僚が妊娠を理由に突然職場からいなくなったり、似たような給与で働いているにもかかわらず、子育て中の同僚にだけ時短勤務が許可されていたりする状況は耐えがたい、という気持ちも分かる。

本来ならこれは会社側が人の増員やノルマを減らすことなどで対処すべき問題だが、現実は企業にそこまでの余裕も体力もない。結果、「産まない女子」のやり場のない憤懣が、子宝を得て幸せオーラを全開させているように映る「産んだ女子」に向けられ、険悪な雰囲気になっている職場は少なくないというわけだ。

いったい現場にはどのような諍いが渦巻いているのか。小売りの企業で経理を担当する古田美咲さん(34歳・独身・仮名)が「産まない女子」側から「産んだ女子」たちへの不満を述べる。

「時短勤務の人が増えると、私が計算しなければいけない伝票の量が1.5倍に増えるんです。決算前の夕方、こっちが忙しく電卓を叩いている時に、子育て中の同僚が『お先に失礼します』とちゃっかり帰っていると、『なんで私が、結婚も出産もして家庭での幸せを手に入れた人の尻拭いをしなくちゃいけないの?私、あなたの召し使いとか母親じゃないんだよ』と怒りが沸き上がってくる。

私がデートしたくても帰れないけど、彼女の子育ては許される。両方、プライベートなのにおかしいです。これで私の婚期が遅れて子供を持てなかったら、あの人が責任取ってくれるんですか」

さらに、「産んだ女子」が、育休が明けてすぐ、再び妊娠して産休に入るようなことがあると「産まない女子」たちには、ますます怨念が込み上げてくるという。アパレルメーカーに勤める板野由美子さん(43歳・独身・仮名)はこう言う。

「職場の若い女の子が妊娠して、1年ほど休職しました。その時はちょっとこっちの仕事が増えて大変だな、くらいの気持ちだったのですが、彼女が戻ってきて1年少し経った頃、『やだぁ、また子供ができちゃって……』と言い出したんです。

その悪びれない言い方にカチンときて、つい『ずいぶん妊娠するのが得意なのね。大変ね、そんなにいつも……』と嫌味を言ってしまいました。自分でも情けなくなりますが、やってられなくて」