韓国「核武装」、本当の矛先は日本?
〜日韓関係悪化はアベノミクスのせいだ

佐藤 優 プロフィール

佐藤:だから私は、穿った見方をしているんですよ。韓国の世論が「核武装をしなければいけない」と思い始めていることは確かです。

しかしこれは、韓国が大国であるという地位をつかむためには核がなければいけない、あの小さな、経済力においては韓国と比較にならない北朝鮮ですら国際社会でこんなに大きく扱われるのは、核を独自開発しているからだ、という感じになってきているのであって、これは一種のナショナリズムの高まりなのではないかと思うんです。

邦丸:はい。

アベノミクスに核で対抗

佐藤:イランがそういう発想の国です。イランは、民意が核開発をサポートしています。ですから、イヤな感じがしますね。

最近の日韓関係が悪い原因は、歴史認識や慰安婦問題でも、安倍さんのキャラクターでもないんです。歴史認識や慰安婦問題は昔からあるし、過去には安倍さんよりももっと激しい人がいましたから。むしろ問題は、アベノミクスがある程度成功していること、さらに、今回のマイナス金利が関係しています。

アベノミクスもマイナス金利も、目的は円安誘導です。韓国から見れば、ウォン高で、輸出がしにくくなる。つまり、日本は為替ダンピングをやっているように見えるんですよ。

為替ダンピングをやっているという印象を韓国が持つと、生活にかかわるから、日本に対して韓国の国民感情が草の根から悪くなる。日本がこういう政策をとっているから、仕事を一生懸命しているのに韓国製品が売れない。賃金の低下にも、失業にも、社会の閉塞感にもつながる。すべて日本のせいだ。しかし、考えてみろ。日本は大変な経済大国だし、人口も多い。仮に、われわれが核を持っていたら、日本も韓国を軽く見ないだろう――と、こんな感じがあるんじゃないかなと、私は見ているんです。

邦丸:そこでの核武装がナショナリズムに結びつくと、危険というよりちょっと安易な気がしますが…。

佐藤:安易なんだけれど、朴正煕大統領の時代にもありましたからね。

邦丸:今の朴槿恵大統領のお父様ですね。

佐藤:ですから、北朝鮮だけではなくて韓国の核武装も、私たちは非常に気をつけなければいけないし、国際社会と連携して封じ込めなければいけないという、外交上の重大な課題が出ていると思います。

日本は非核化政策を貫くべきだけれども、原子物理学の能力としては核兵器をつくることができるぐらいの能力を持っていたほうがいいと思うんです。つくる“能力”はあるけれど、つくる“意思”はない。日本はこの方針を貫徹することが重要です。

韓国のように、能力をある程度持っていて意思も示す、ということになると、本当に北朝鮮より怖いですよ。北朝鮮は意思があっても能力がついてこない。能力のある韓国は、2年程度で核兵器を作れます。

意思がないということで安心していたんだけれど、やるかもしれないと思うと、「韓国に原発があるのは大丈夫か。特に原子力の再生エネルギー・システムは絶対にダメだ。プルトニウム抽出とかウラン濃縮とかやられたら困る。製品の燃料棒だけ買ってくれ」と、こういう話になりますよね。しかし韓国は、それすら読めていないと思うんですよ。

邦丸:だから朝鮮日報の社説に対して、アメリカ政府の高官が間をおかずに「それはいけないよ」と反応しているんですね。

佐藤:それはそのとおりですよ。朝鮮日報の社説は明らかに、どういう反応をするかという、世界に向けての発信なんですね。だから、日本の外務省も「なにを寝ぼけておるか。これは新聞の社説ではあるが、とんでもない話だ」と厳しく非難して、「よもや韓国政府はこんなことは考えていないだろうけれど、新聞の社説であっても、われわれは今後の動きを注視している」と強く牽制しなければダメなんです。

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」(2016年2月24日配信)より