井端弘和「いぶし銀」の決断
~もう少しで名球会、でも未練はなかった

二宮清純レポート
週刊現代, 二宮 清純 プロフィール

続く第2ラウンドでも井端は救世主となった。負ければ敗者復活戦に回らざるをえなくなる東京ドームでの台湾戦。9回2死、値千金の盗塁を決めた鳥谷敬を二塁に置き、5球目の真っすぐをセンター前に運んだ。流れを引き寄せる同点打だった。

ここぞという場面で見せる井端のセンターから右への"広角打法"は中日時代に身に付けたものだ。この熟達の技術で長年、メシをくってきた。

師匠は広島と阪急で活躍した職人肌のコーチ水谷実雄である。

「井端に教えたのは打席での我慢。フリーバッティングでも自由に打たせなかった。だって考えてみてよ。本番になると、誰も打ちやすい球は投げてくれない。だったら、練習の時から本番を想定して窮屈な姿勢で打ったほうが実戦的でしょう。

早く打ちたいところを我慢し、軸足までボールを引き寄せてから反対方向に持っていく。そのほうがヒットになる確率が高いし、チームも助かる。その技術を徹底して仕込みましたよ」

また井端は"守備の人"でもある。ゴールデングラブ賞7度の実績はダテではない。

こちらの師匠は現阪神ヘッドコーチの高代延博。

井端は語る。

「高代さんに教わったのは基本の大切さ。正面のゴロをいいかたちで捕る。それができて初めて、次は1~2歩動いて捕る。よく特守とかで飛びついて捕るシーンがあるけど"あんなものは必要ない"というのが高代さんの考え方でした」

今季の巨人は2年目の岡本和真をサードで育てる方針だ。高校時代まではファースト。ノックバットを持つ井端の目が鋭く光る。

「サードは素人。だけど変なクセがついていない分教えやすい。僕が彼に口を酸っぱくして伝えているのは軸足の大切さ。軸足に体重を乗せずに構えるから頭が前に突っ込み、スローイングが乱れる。基本さえできれば、十分にうまくなります」

自分の生きる道はどこか

井端の名手ぶりを示すエピソードを2人のレジェンドが証言する。

まずは50歳での登板記録を持つ通算219勝の山本昌。「彼がいなかったら、僕は200勝していなかった」と明かす。

「"あっ、やられた"と思って、後ろを振り返ったら、常に彼がそこにいるんです。読みも技術も素晴らしい。逆に彼が捕れない時は諦めがついた。これはオレの責任だ、とね」