井端弘和「いぶし銀」の決断
~もう少しで名球会、でも未練はなかった

二宮清純レポート
週刊現代, 二宮 清純 プロフィール

40歳を過ぎたとはいえ、2000本安打まであと88本と迫った井端が、昨季限りで現役を引退し、コーチに就任するとは意外だった。

井端に引退を決意させたのは昨年10月、同級生でもある高橋由伸からかかってきた一本の電話だった。

「オレ、来年から監督をやることになったんだ」

「それで、オレはどうすればいいの?」

「いや、それはオレの口からは言えない」

井端はピンときた。

〈オレにコーチをやって欲しいんだろうな……〉

一呼吸置いて井端は答えた。

「じゃあ、オレも一緒に辞めるわ」

2000本安打への未練はなかったのか?

「1500本を過ぎた頃から漠然と"2000本まで行けたらいいな"とは思っていました。しかし、正直言って、それにしがみつく気持ちは全くなかった。

こう言うと失礼かもしれないけど、2000本安打を記録すれば皆、名選手なのか。僕は、そうは思っていない。2000本に届かなくても、素晴らしい選手はたくさんいる。監督(高橋)も、そのひとりだと思います」

そして、こう続けた。

「もし僕が(コーチを)引き受けなければ、(一軍首脳陣の中では)監督が一番年下になってしまう。それを避けられたのはよかったのかなと……」

気配りのにじむ言い回しに"友への思い"が見てとれた。井端弘和とは、そういう男である。

「いぶし銀」の原点

井端ほど"いぶし銀"との形容が似合う選手はいなかった。攻守にわたって玄人好みのプレーを披露し続けた。

記憶に新しいのは2013年3月に行われた第3回WBCでの活躍だ。

ヤフオクドームでのブラジル戦。負ければ第1ラウンド突破が難しくなる。8回、代打に起用された井端は起死回生の同点打を放った。

1ボールからの2球目、「シュート気味の真っすぐ」をひじをたたんでライト前に弾き返した。