際どいボールをカットしつづける粘りのバッティングに、ゴールデングラブ賞7回の華麗なグラブ捌き。いぶし銀の技術でチームを支え続けた名手は、今度は参謀として、盟友を支える道を選んだ。
内野にゴロが転がると同時に本塁目がけて三塁ランナーがスタートを切る。タッチよりもスライディングの方が一瞬、早い。昨季までならアウトと思われるケースのほとんどがセーフとなった。
宮崎での巨人キャンプ第2クール。ノックバットを持つ井端弘和はひとつのプレーが終わるたびに守備位置を確認し、選手たちに指示を出した。それが内野守備走塁コーチとしての事実上の初仕事だった。
プロ野球は今季から本塁付近でのクロスプレーに関するルールが変更された。キャッチャーはブロックが禁止され、ボールを持たずに走路を塞ぐと走塁妨害をとられることが確認された。
一方でランナーも、走路からはずれた位置にいるキャッチャーへの体当たりは危険なプレーと見なされ、悪質な場合は守備妨害をとられることになった。
新ルールにどう対応するか。それがキャンプ前半のプロ野球の最大のテーマだった。
「ブロックが許されないキャッチャーは、手だけで(ランナーに)タッチにいくしかない。特にファーストとセカンドからの送球を受ける際は、昨季までよりも素早く処理しなければ(ランナーに)回り込まれてしまう。この2つのポジションは昨季より前に守らせる必要がありそうです」
練習後、腕組みをしながら井端は答えた。
開幕までには、まだ時間がある。審判の判定に対する傾向を探りながら、どんな対策を練るのか。新コーチの腕の見せ所である。