窮地に陥った仲間のために、あなたは何ができますか?

『赤毛のアンナ』著者・真保裕一さんインタビュー

ただ、優しくされたいと思う寂しさ

ーーやがてアンナは施設を出て、高校に通い、就職します。その後、男性との交際もあったわけですが、いずれも線が細く、あまり頼りにはならないタイプですね。

著者の真保裕一さん

ええ。卑怯な男ばかりにしようと決めていたんです。現実的に考えても、彼女の辛い過去をすべて受け止めて、堂々と「俺が引き受ける」という男がどれだけいるかということもあるし、特に最近は弱い男が増えているように思うんですよ。

女性からプロポーズすることも珍しくないそうだし、だらしない男が多くなった気がする。もっとしっかりしろよ、と言いたくなる。実際は自分の若い頃もそんなもので、歳を取ったから思うのかもしれませんが。

ただ、確実に今の若者は親に手をかけられて育っているとは思います。昔はもっと放ったらかしでしたからね。だからこそ、たくましさを持つ面もあったわけで。

ーーアンナはどうしてこんな男たちと付き合ってしまうんだろう、と残念に思うのですが……。

彼らは確かに優しいだけが取り柄ですけど、それはアンナに男を見る目がないからじゃない。彼女の生い立ちを考えると、ただホッとしたい、優しい男と一緒にいたい、という気持ちが強かったんじゃないかと思うんです。

優しい男というのは、気弱な面も持っている。実は恋人にも厳しい男こそ、本当の意味で優しいこともあるんだけど、なかなか若い女性には分かってもらえない。女性でも、男にモテるけど女に嫌われる人っていますよね。「同性に好かれる人」はいいヤツなのに、なかなか異性に理解されない。特に若いうちはそう。優しいからこその厳しさというのは、歳を取らないと見えてこないところもあります。

ーー同じ施設で育ったこずえ、高校の同級生だった理世たちが事件をきっかけに集まり、アンナを助けようと奔走する。友情に胸が熱くなりました。

この歳になると友達が死んだりするので、本当に「あのとき、ああすれば良かった」って、集まって話したりする。友達がいたから今の自分がある、という実感が強くあるので、その気持ちを素直に物語に込めたということです。

アンナを中心とした物語ではありますが、実際はこずえや理世など、彼女の周りにいた女性たちが主人公なんです。いざというとき、自分は友達のために何ができるだろうか。それを考えることは、自分の歩いてきた道のりを見つめ直す作業でもあると思います。

社会に出て家庭を持つと、どうしても学生時代の友達とは疎遠になっていくでしょう。でも、たまに会うと、やっぱり昔からの友達はいいなと思いますよ。何年も会っていなくても、すぐに昔に戻れますから。そんな関係を率直に、大切にしたいですね。

しんぽ・ゆういち/'61年東京都生まれ。'91年『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。'96年『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、'97年『奪取』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞、'06年『灰色の北壁』で新田次郎文学賞を受賞

(取材・文/伊藤和弘)
『週刊現代』2016年3月5日号より