40男が陥るモテ錯覚「もしかして俺、イケてる?」と思い込む人たち

大宮 冬洋

20代の女性に恋をした、40代の僕

ナオコさん(仮名、26歳)はある会社の営業職として前のめりに働いている。目鼻立ちがはっきりした美人で、よく笑う元気な女性だ。数年前の初対面から僕を「冬洋さん」と下の名前で親しげに呼んできた。学生時代のサークルのようなノリである。僕は脳みそが学生時代に戻ってしまい、「かわいい新入生」のナオコさんに恋をしてしまった。

この「脳だけハタチに退化病」は僕だけが患者ではない。20代半ばまではちっともモテなかった大卒の30代40代男性が発症しやすいのだ。

後述するが、20代後半になると結婚を強く意識し始めた同世代女性から急にモテる時期がある。しかし、そんな程度のモテでは女性にはほとんど縁がなかった青春時代の哀しみは癒えない。もっとこんな恋がしたかった。すごい美女と付き合ってみたかった……。

20代の頃に比べれば、ちょっといいお店を知っていたり、仕事でも自信がついていたりする。経済力も増している。いまの余裕を持ってすれば、とてつもないモテが経験できるのではないだろうか、と妄想が膨らんでくる。

で、若くてキレイな女性に優しくされたりすると、自分が「スマートで裕福な20代」になった錯覚をして愚かな行動をしてしまうのだ。大人の麻疹(はしか)は症状が重いのとちょっと似ている。

なんだか切なくなってきたが続けよう。ナオコさんは社交的な性格で、食事に誘えば気軽に来てくれる。おいしそうに料理を食べてお酒も飲む女性だ。僕の数少ない趣味である映画鑑賞にも話を合わせてくれる。僕の恋心は高まっていった。

そんな僕の下心を見透かしていたのかもしれない。とっておきのスペインバルに誘ってワインを一緒に飲んだ先日、会社や取引先で既婚のおじさんたちにモテすぎて困る話をナオコさんは披露した。5分で済むような商談を2時間ぐらいに引き延ばすおじさん、ナオコさんのデスクの隣にわざわざ椅子を持って来て身を乗り出すようにして雑談を始めるおじさん、などだ。見苦しい。実に見苦しいぞ。

僕は優越感に浸りながら高らかに笑った。オレは仕事抜きでナオコちゃんと二人きりで食事をしている。会話の内容だって高尚だ。みっともないおじさんたちとは次元が違うぞ、と。